限定迷宮
「おいっ、アン、何してる」
僕はアンを追っかけるが、扉のとこで見えない壁みたいなのに阻まれて進めない。ハンマーを出して思いっきり叩く。けど、見えない壁はびくともしない。
コンコン。
見えない壁の隣をピオンが叩く。
「ザップ、音響、感触からこの先は存在しない。その扉の先はどっか違う所に繋がってる」
ピオンがそう言う間にもアンは先に歩いて行く。前は通路。光源は無いのに昼の屋内くらいの明るさがある。存在しないって言っても見えている。
「ザップ、追っかけるわよ」
マイは四角柱に手を乗せると、扉をくくぐり通路に駆け出す。僕も真似して通路に向かう。入れた。
「考え無し過ぎる。私は行かない」
後ろでピオンの声がするが、僕はそれを背にマイとアンを追っかける。
「おいおい、なんで、許可無く進んだんだ?」
合流するなり僕はアンを問い詰める。
「この先に古竜の誰かが居る。そりゃ進むですよ。それに、なんだかんだで、時間経ったらご主人様は行ったと思いますよ。時間短縮です」
まあ、今までの事を思い出すに、多分そうなってただろう。
「まあ、そうだな。多分なんだかんだで進んだだろな」
「けど、話し合って欲しかったわ。まあ、あたしもなんだかんだで進んだと思うわね」
マイも怒ってないかみたいだ。なんか、みんな『なんだかんだ』って言ってるな。
「そうだな。なんだかんだで私もついて来てるし」
うわっ、ピオン、気配がしなかった。
「お前、留守番じゃなかったのかよ?」
冷静で慎重なピオンがついて来るとは思ってなかった。
「あ、ピオン、寂しかったんでしょ」
マイがイタズラっぽい顔でからかう。
「寂しくは無いが、お前たちを待ってるのも退屈だからな」
ちょっと顔が赤い。図星だったんだな。
「そんな事より、ザップ、私を殴ってみろ」
ん、いきなり何言うんだ?
「殴れる訳ねーだろ」
なんかピオン、僕の事をバトルジャンキーかなんかだと勘違いしてないか?
「前に一度は私の首を落とした癖に。細かい奴だな」
「違うだろ。お前が自分たちでやったんだろ」
ピオンとのファーストコンタクトを思い出す。あれは壮絶だった。けど、詳しい事話すとマイが不機嫌になるから止めとこう。チューしたもんな……
「なら、私が殴る」
ペチン。
ピオンの右ストレートが僕の頬に触れる。なんだそのへなちょこパンチ。スピードも威力も無い。
「ん、遊んでるのか?」
「いや、全力だ。その前に、私程度の攻撃が当たるザップじゃないだろ」
「え、もしかして」
次はマイが僕に平手を放つ。
ぺっちーーーーん。
音だけで、ヒリヒリするだけだ。普段だったら首もってかれて吹っ飛ばされてる所だ。
「マイ、気付いたか?」
「うん、力が出ない。ていうか、昔に、ザップに会う前くらいに戻ったみたい」
ええっ、まじか? これってもしかしてさっきの契約か?
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