地獄の門
『これから先に進む者、一切の希望を捨てよ。
我を過ぐれば憂ひの都あり、
我を過ぐれば永遠の苦患あり、
我を過ぐれば滅亡の民あり。
義は尊きわが造り主を動かし、
聖なる威力、比類なき智慧、
第一の愛、我を造れり。
永遠の物のほか物として我よりさきに
造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ、汝等ここに入るもの一切の望みを棄てよ』
プレートの上半分にはなんか聞いた事が有るような言葉と、古代の詩みたいなものが書いてある。地獄の門、そうだ地獄の門だ。たしか彫刻か何かでそんなのがあったな。それは黒いブロンズ像で人の像がゴテゴテしく飾られたものだったような。昔、図書館で見た気がする。まあ、この門も金属で出来てて黒くはあるが、『地獄の門』って言う程じゃないな。
「これって、地獄の門の碑文ね」
あ、さすがマイは知ってるか。
「地獄の門ってなんですか?」
アンが聞く。まあ、知らんよな。門は食べられ無いからな。って、昔なんかアンのヤツ、門にかじりつくとか言ってたな。
「なんか昔の物語で、地獄を旅する人が地獄に入る時にくぐった門の事よ。その話を元に、有名な彫刻家が作ったのが『地獄の門』なのよ」
「へぇーそうなんですね。で、なんでそんな文章が書いてあるんでしょう?」
「この先は地獄だよーって言いたいんじゃないの?」
「じゃそう書けばいいのにですね」
「多分かっこつけたいのよ。ザップと同じ中二ね。それよりも問題は下よ」
中二ちゃうわ。そう、本当にそれより本題は下の文だ。
『この先の迷宮に進むと、最下層からしか戻れない。この先では全ての力を失う。その代わり、得るものは甚大である。知略を駆使して迷宮を攻略出来る自信がある者のみ、そこの認証石に手を押し当て合意し、先に進むがいい』
ん、なんか剣呑な事書いてある。力を失う?
「これ、聞いた事ある」
ピオンが口を開く。
「限定迷宮。縛りがある迷宮。何かを出来なくさせる代わりに報酬が跳ね上がる迷宮。有名なのに『魔封じの迷宮』、魔法が使えないものがある。限定迷宮は入る時に契約が必要になるそうで、契約しないと中に入れない」
なんだそりゃ。僕らはスタンピードを抑えるために来て、スタンピードしてないからもう帰って良いような気がする。
「どうする? ザップ進む?」
マイが聞いてくる。
「全ての力を失うって、なんかヤバげじゃないか?」
「大丈夫ですって。そういうのって基本的に大袈裟に書いてあるものですよ」
ん、アンはそう言うと、プレートの前の床からせり出した四角柱の上に手を乗せる。
ギギギーーーーッ。
扉が軋んで開き、スタスタとアンは中に入って行く。
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