マッシュの手 2
「見れば見る程不気味だな」
僕はテーブルの上の『マッシュの手』をまじまじと眺める。僕より少し小さい右の手が手首から先だけあり、それを3センチくらいの厚さの謎のガラスみたいなものが覆っている。手は何故か切られてる手首のとこも皮膚っぽいもので覆われていてそこまでグロテスクじゃない。手を観察してみる。こりゃ貴族かなんかの手だな。手になんのタコもなく、苦労せずに育ってきた人の物だ。なんか手のひら柔らかそうだ。毛は生えてなく日焼けしてなく、男性のものか女性のものか分かんない。けど、『マッシュ』って言うくらいだから男性なんだろう。
「不気味とか言ってる割には、ガン見してるじゃない。魔道具って事は何らかの効果があるって事よね。ジブルが帰ってくる前になんなのか当ててみない?」
とか言うマイもまじまじ見ている。人? の手なんかそうそう凝視する事無いもんな。
「そうだな。俺は多分これは封印されてるんだと思う」
僕は恐る恐るそれに触れてみる。うん、ヒンヤリしてる。感触もガラスみたいだ。
「多分、マッシュって言うのは凄まじい魔法使いか悪魔かなんかで、右手に凄まじい力を持ってたんだろう。それでそれを討伐に来た者に手首から切り落とされたけど、それでもその手から瘴気が溢れ出て聖なる者に封印されたんだろう。そんなとこじゃないのか?」
「無いねー」
「無いですねー」
マイとアンが首を横に振る。ノリが悪いな。
「ザップってそう言うの好きよね。なんて言うか……」
詰まったマイの言葉をアンが続ける。
「中二、中二ですね!」
アン2回も言うな。
「おいおい、それじゃ、お前らはどんなんだと思うんだよ」
「そうねー」
マイが考え込む。
「多分、この手が『マッシュの手』って言う魔物なんじゃないかしら。指に見えるものが足で、それでトコトコッて走るんじゃないかしら。誰かが見つけて捕まえて、それをこの謎素材で覆って、珍しい魔物だから飾ってたんじゃないかしら?」
僕の頭の中でマッシュの手が指を地に着けて歩く。うん、なんかブサ可愛らしい。そこはかとなく夢があるな。けど、こんな人の手みたいな魔物は飾りはしないだろう。
「これ、魔道具なんだよな? 効果が分からない。癒し? か……」
「何気持ち悪い事言ってるのよ。こんなの見てもなんも癒されないわよ」
って、マイが飾るものって言ったんじゃないか。
「なんか2人とも夢を見すぎですね」
食べ物オンリーのドラゴン娘が煽ってやがる。
「良ーく見て下さい」
アンは手を間近でジロジロ見る。
「おーっと、手が滑った」
後ろからアンの頭を軽く押してやる。
ゴツン!
あ、アンコケて直撃しやがった。
「何するんですか! 微妙に痛かったじゃないですか」
「おお、アンの頭突きで壊れないって『マッシュの手』頑丈だな。あっ、スマンスマン」
アンが『マッシュの手』を頭上に掲げたので謝る。
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