メダリオン地下街
大劇場を後にして、僕らは次はメダリオンの名物だという、『食い倒れ地下街』と呼ばれている所に向かう。アンは宿屋で貰った街の案内のパンフレットを手にしていて、朝からずっと「食い倒れー、食い倒れー」って呪詛の様に呟いている。まじウザい。
まあ、けど、美味いものを食う事に関して異論がある者は居ないから、次はそこに向かう事となった。有名だと言われていた卵料理は期待外れだったから、次はそうじゃないと願うので、俄然テンションが上がる。
「なんか、ダンジョンに入るみたいねー」
地下への階段を降りるマイが呟く。ダンジョンにしては小さい階段だな。
「まあ、ダンジョンも地下街も同じようなものよ。ドキドキするって事は一緒やし」
まじで、ピオンじゃなくプリンさんは良く喋る。別人みたいだな。
「けど、ダンジョンには美味しいものが無いです。私はもう犬の肉は懲り懲りです」
アン、声がデカい。うへっ、通行人が振り返っている。
「おい、アン、こんな都会で犬を食うなんて言うな。せめてちゃんとヘルハウンドって言えよ。俺らが田舎者の野蛮人みてーじゃねーか」
「ザップ。声が大きい! ヘルハウンドの方が問題よ! もう、みんな見てるじゃないの。さっさと行くわよ」
マイはスタスタ階段を降りて行く。そうだった。ヘルハウンドを討伐出来る冒険者なんて一握りしか居ないんだった。
「あんたら、あんまり口ひらかんとき、常識無いんだから」
んー、多分この中で一番の非常識の塊のプリンさんに言われたくは無いな。
そして僕らは地下街に入る。ここも碁盤の目のように道があり、囲まれた区画に幾つものお店がある。贅沢に天井には沢山の魔法の明かりがあり、昼と変わらない明るさだ。カップル、家族連れ、女の子や男の子の子のグループ。沢山の人が歩いている。人酔いしそうだ。
「あのですね、あそこに『タコボール』と『たこ焼き』のお店があるのですが、タコボールとたこ焼きって何が違うんですか?」
アンが僕に聞いてくる。たこ焼き、タコボール? 名前ほぼ一緒だから同じものじゃないのか? タコボールが西方風でたこ焼きは東方風とかそんな感じじゃないのかな。
「えっ、アンまじでゆーてるの? あんたメダリオン名物のたこ焼きとタコボールの区別もつかんの? しゃーない教えたるわ。たこ焼きはみんな大好きみんな知ってる丸く小麦粉を焼いた中にタコが入ってるやつな。タコボールは魚のすり身にタコ入れて丸く炊いたやつや」
まじか、危ねー、知ったかかますとこだった。そして僕らはたこ焼きとタコボールを口にする。どっちも美味しいけど、やっぱたこ焼きの方が好みだ。




