ミレニアムメダリオン
僕らはピオンのおすすめの店で飯を食い、早めに宿で休んだ。なんだかんだで疲れてたから、くたーっと早く寝てしまった。そして、早起きして宿の中庭で軽く素振りして汗を流し、宿のカフェバーで朝食を取りメダリオンを散策する事にした。
僕が今まで来たことがある街は、教会や城を中心に広場があり、それから放射線状に道が伸びてるつくりだったけど、ここは違う。南北に伸びる道が碁盤の目みたいに走っていて、高い建物が多く鐘楼や王城みたいな目印がない。けど、全ての道には名前があり、分かり易い所に立て札や標識に書いてあるので、慣れれば全く迷わないらしい。街を囲んでいる城壁は、他の街は円形や、いびつな円形だったけど、ここは正方形だそうだ。かなりの昔からここには王は無く、合議制だそうで、王城は無いそうだ。
城が無いって事は、戦になったらどうするんだろうと思ったけど、この地で大きな戦乱になった事は有史以来一度も無いという。城壁は魔物が街に入らないためのもので、戦で使われた事は無いので数千年前に作られたものを今だに補修して使ってるそうだ。それ故、メダリオンの事は千年都市とも呼ばれているそうだ。街の中に有る古びた建物も千年クラスはゴロゴロあるそうだ。そして、ここメダリオンは文化の中心として、前衛的な建物も建ち並び、新旧こもごもなカオスな様相を呈している。
あと、ここでは、南北に伸びる道を『筋』、東西に伸びる道を『通り』とよぶという。これはメダリオン独特の呼び方だそうだけど、分かりやすくてとってもいい。戦乱が多く巻き込まれた都市は攻められにくいように道が分かりにくくなってる事が多いから、この街は好印象だ。道1つの事を取っても戦争って良いこと無いなと思う。
迷宮慣れしてる僕は道に迷う事は無いが、ドラゴンなアンなんかどこでも良く迷ってるからな。
僕らはピオンに連れられて、メダリオンで有名な建物、ミレニアム大劇場という所にやって来た。ここは、千年歌劇団という、女性だけで演劇をする劇団の本拠地で劇場であるとともに劇団の居住地だそうだ。僕は千年歌劇団というのは聞いた事しか無かったけど、マイ、それにアンでさえもキャッキャはしゃいでいる。その千年歌劇団って女の子たちにはかなり人気あるそうだ。
けど、凄い建物だ。大きさは下手な城以上ある。そして、装飾が多い外観に品がいい作りで、言葉であらわすと『宮殿』って感じだ。
「一度は公演、見てみたいわよねー」
マイがうっとりして劇場を見ている。
「んー、そうそうチケットはいらへんからなー。まあ、期待せんで待っといて」
ピオンが答える。そんな人気なら少し見てみたい気もする。
 




