芸忍者 9
「あんなに、そっこー売らなくてもいいじゃないですか。私、今日の仕事流れただけじゃなくて、しばらく謹慎ですよ!」
僕らの前には口を尖らせたナナフシ。
とりあえず、宿でも探してから、情報収集しようという事になって、取った宿のカフェバーでゆっくりしてたら、また、ナナフシが来た。豚箱に入ったんじゃなかったのかよ? 出てくるの早いな。
「ナナフシ、ずっと臭い飯でも食うときゃ良かったのに。どうせまた金積んだんやろ」
プリンさんが絡む。陰キャが化けてるとは思えない話しっぷりだな。
「人聞きが悪いこと言わないでよ。私これでもこの街では人気者なんですから。プリンさんと違って。保釈金って言ってください。それよか、ザップさん達は『忍者の里』の情報が欲しいんでしょ。大金貨10枚で、知りたい事全部情報集めてきますよ」
大金貨10枚、それは高すぎる。
「って、お前、それ、さっき払ったお金に色つけてゆーてるやろ。もっとまけなさいよ」
プリンさんがマシンガントークで絡む。さすが元プロ芸人。
「いやいや、こっちも仕事しばらく干されてるんですから、これ以上はびた一まかんないですよ。干上がって首くくらないといけなくなってしまいます」
「そーなんや。じゃ、今すぐ、ここで首くくりや。うちらは他の情報屋捜すから」
立ち上がろうとするプリンさんにナナフシががしっと掴まる。仲良いな。
「わかりましたっ! 半額半額でいいですよ」
「安い女やなー。そんなら最初っからふっかけんときや。お前もやすう見られるで」
「えっ、じゃあ、もっと貰えるんですか?」
「んな訳あろかい。大金貨5枚。これで手打ちや。仕事は里長も含む、里のみんなの動向。頼んだで」
「了解。明後日、明後日の朝にここで待っててください。では、アデュー」
ナナフシは敬礼すると、入り口に走って行った。落ち着き無いやつだな。嵐が去ったようだ。なんかプリンさんと2人で掛け合い漫才みたいだったな。忍者ってこんなんばっかなのか?
「で、あいつ信用できるの?」
マイがプリンさんに聞く。
「そりゃ、もうまんたいでいけるわ。うちの弟子やから。ああみえても、あいつめっちゃ顔広いんよ。見ての通り全く人見知りせーへんし」
うん、人見知りしてないね。むしろウザかった。
「明後日ですかぁ。時間空きましたね。何します?」
そう問いかけるアンの顔にはお腹空いたって書いてあるように見える。どっか美味い飯屋にでもいってみるか。




