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 第一層 冒険者の行列とマッチポンプ


 僕達は扉をくぐりしばらく進むと、石造りの大広間に出た。


 部屋の奥の正面にはまた大きな金属の扉があり、その隣にまた普通サイズと思われるドアが付いていて人が並んでいる。多分通用口だろう。左右の壁近くには煌々と光る魔法陣があり、右手には行列が出来ている。


「ここは中地下一層、ポータルの間よ」


 ジブルが説明してくれる。


 見渡すと、屋台や露天もあり、小さな市みたいになっている。右手のポータルには人が入っていき、左からは出て来る。


「ねー、ジブル。私達は使えないの?」


 マイは右手のポータルを手で指す。


「残念ですけど、行った事のある階層までしか行けないのですよ」


 マイにジブルが答える。ジブルはマイには丁寧に未だに話す。


「じゃ、今の俺達にはここは関係ないな」


 僕達はさっさと出口だと思われる正面の通用口に進む。


 通用口の扉をくぐると、また広い道幅のなだらかな坂道が続いている。


 僕達は延々とうす暗い石造りの坂道を降りていく。


 広い。つまんない。飽きた。それに少しカビ臭い。


 走って行こうにも前にはぞろぞろ他のパーティーがいるので邪魔だ。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 やっと開けた所に出るが、他のパーティーも全員同じ通路に向かって歩きだす。


「おい、ジブルなんとかならんのか?」


 もう駄目だ。僕は行列とかに並ぶのは大っ嫌いだ。イライラして何かに八つ当たりしたい気分だ。


「うー、みんな地図もってて、地下五層まではスライムしか出ないから、降りる階段目指して一直線なのよね」


「えー、それじゃあずっとしばらく行列のままなの」


 マイが不満を口にするが、僕にも解決策が思いうかばない。他の冒険者をなぎ倒して行く訳にもいかないし。正直このままだと、今日一日が何もせず歩くだけになってしまうかもしれない。僕が発狂しなければだが。


「おい、ジブル、みんな抱えて飛べないのか?」


「無理ですよ、私ではせめて1人が限界です」


 妙案だと思ったんだが。


「あたしの魔法で前の人達を迷わせようか?」


 妖精が手を上げる。


「さすがに、精神魔法はまずいだろ、攻撃してるのと変わらないし、というわけで、ラファもダメだからな」


 危ない、ラファの目が赤く光ってた。やる気満々だったみたいだ。


 なんか平和的ないいアイデアないかな?


 無いな……


 やむなし、やるか必殺マッチポンプ。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ドラゴンだ!」


 僕は叫ぶ。


「私達が食い止めてるうちに逃げて!」


 マイが斧を構え声を張る。


「グォオオオオオオオーッ」


 僕達の前の巨大なドラゴンが咆哮をあげる。大丈夫だ。威嚇効果のないただうるさいだけのヤツだ。


 ここはとある大部屋、部屋の中央に暗黒地帯ダークネス・ゾーンという闇で目隠しする魔法をジブルに使って貰って、アンにドラゴンになってもらった。変身の前は服を脱ぐルールになっているから、アンにはそこで脱いでもらった。


「ド、ドラゴン!」


「逃げろ!」


「死にたくない!」


 回りにいた冒険者達は蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。


「よし、もういいだろう。闇の中で戻れ」


 アンは暗黒地帯に向かって、人間スタイルになって戻って来る。


「まさか、本当にドラゴンだったなんて…けど、大丈夫なの?」


 尻もちをついて腰を抜かしたジブルが呟く。


「何言ってる。ただアンは大声を出しただけだ。この街では大声をだすだけで、罪に問われるのか?」


「けど、調査隊とかが組まれるわよ」


「何日かかかるだろ。その時は俺達は深層にいるはずだ。じゃあ、とっとと下に向かうか」


 僕の服を誰かがくいくいっと引いてくる。


「ねぇ、ザップ、ミケ、ミケがいないんだけど」


 見渡すと、マイ、アン、ラファ、ジブル、ミネア。


 うん、ミケがいない。


「ザップ、ミケなら一目散に逃げてったわよ」


 マイが迷宮の奥の方を指差す。


 あの馬鹿、ちゃんと説明してたのに……


 ミケの捜索は難航して、多分普通に行列に並んでた方が早く次の階層まで行けたのでは……




 

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