芸忍者 3
「うち、ここでは休業中やから、あんま目立ちたないんよ」
ピオンもといプリンは肩で息をついて座る。プリンの猛攻をかわしてたら、マイがプリンに抱き着いて止めてくれた。プリンはミニスカで蹴り上げてたのに、僕からは微塵もパンツが見えなかった。多分舞台で培ったスキルだろう。正直凄い。
「プリン、落ち着いた?」
マイも座る。
「だから、プリン言うなってゆーてるやろ」
「けど、ここじゃプリンなんでしょ?」
「ま、せやけど。しゃあないわ。もうそれでええわ」
どうやら、ピオンはプリンで納得したみたいだ。けど、キャラ違いすぎだから、僕もその方が呼びやすい。今後陽キャのピオンはプリンと呼ぶ。
「プリン姉様ーーーーっ!」
なんかが甲高い声を上げて僕たちの方に駆けて来たと思ったら、そのまま滑るように土下座する。ん、女の子? スカート、生足でスライディング土下座! 足大丈夫か?
「申し訳ございません。プリンお姉様。こんなわたくしめのために貴重なお時間を使わせて。お待たせいたしました。お願いです。お願いですから殺さないでください」
殺さないでください? あ、そうか、プリンって昔は暗殺者だったもんな。それ知ってる人か?
「おいっ! ナナフシ、頭上げろ。うち、めっちゃ晒し者になっとるやないか!」
ん、ナナフシ? あ、ピオンが会おうとしてる奴か。けど、晒し者になってるもなんも。もうしばらく前から僕らはここで注目の的だ。主にプリンさんのお陰だと思うが。
「うぐぅ。ヒック。お姉様がわたくしめを殺さないっておっしゃられるまで、何があってもこの頭上げません」
うわ、地面についた頭のとこから、床に水溜まりが出来始めてる。人間ってこんな短時間にこれだけ涙って出せるんだ。正直ドン引きだ。
「じゃ、頭上げないとコロス」
おっと、いつものピオンの低い声。
「イエッサー」
ナナフシと呼ばれた奴は弾かれたかのように頭を上げる。なんか少しつり目の可愛らしい女の子だ。童顔のプリンさんより少し若いんじゃ?
「ナナフシ、うちはもう前とは違う。少し待たせたくらいで半殺しにはせーへんよ」
なんて言うか、少し待たせたくらいで半殺しって心狭すぎないか? じゃあいっぱい待たせたら全殺しだったのか?
「ありがとうございます。よかったー。プリンお姉様、かなり丸くなられたのですね。体型も」
「やっぱ、死んどくか?」
立ち上がろうとするプリンの肩を隣にいたマイが無言で押さえる。プリンは強いがマイはもっと強い。ていうか、このナナフシって奴一言多いだろ。たしかにプリンさんは、僕と出会った時に比べて性格も体も丸くなった。あ、ゆーたら殺されるわ。




