コウカー事務所
「で、どこに向かってるんだ?」
僕らはピオンの先導であるいている。それにしてもゴチャゴチャした街だ。なんて言うか統一感がない。石造りの王都のような建物があったかと思うと、完全木造の塔みたいな家があったり、いろんなとこに目立つ看板が出てたりする。
「えっ、知らんでついて来たの?」
「知らんも何もあたしたちここ初めてよ」
「あっ、そうやね。うちが今向かってるのは『コウカー事務所』や」
「「コウカー事務所?」」
僕とマイがハモる。
「ちょっと待ってくださいよ。その何とか事務所に行く前に飯でしょ、飯!」
アンがピオンに食ってかかる。そうだ。なんかオムレツかオムライス食べるって言ってたな。
「そうだったわね。うちも小腹すきまろだから、そうねー、そこに入ろっか」
「ん、その『小腹すきまろ』ってなんだ?」
「ああ、それね。なんか昔聞いた言葉で『小腹すいた』って意味らしいけど、かわええからつかってるんよ」
ピオンはそう言ってるけど、可愛いか? まあ、それは置いといて、大通りに面したでっかいオムレツの看板がついた食堂に入る。そういえばなんか、目立つとこにある店って、観光客向けであんま美味しくないって言って無かったか?
そして、僕らはオムレツで腹を満たしたけど、何とも言い難い。確かにデカかった。けど高かった。味は普通らしい。らしいなのは、僕は冒険して図抜けて高価なフィッシュオムレツなるものを口にしたけど、そりゃ酷かった。生魚臭いオムレツ。ここらでは魚があんまり獲れないから魚自体が高価だそうだ。あと、マイが言うには加熱が足りないらしい。温度が低いフライパンとかにクセがある魚を入れたら臭みが増すそうだ。この店じゃ二度と食わんわ。
そして、またピオンについて行く。
「その、コウカー事務所に何しに行くんだ?」
「決まってるやないの。情報収集よ」
なんかピオンの関西弁がウザく聞こえ始めた。最初はちょっと可愛いなって思ってたけど。ずっとはきつい。カロリーが高すぎる。
「ねぇ、コウカー事務所って、あのコウカー興行の事務所なの?」
「そうや」
マイにピオンが答える。コウカー? コウカー? あ、コウカー興行は聞いた事がある。王都で人気なコメディアンを幾人も抱えている事務所だ。けど、僕が王都で好きなコメディアンはコウカー興行じゃない事務所の美味しい物を食べたときに『うまっし』と言う、マッチョな人だ。
それは置いといて。
「なんで、コメディアンの事務所なんだ?」
「知らない人多いと思うけど、コウカー興行には何人も忍者がいるのよ」
ん、忍者芸人。なんか胡散臭くて面白く無さそうだな。




