メダリオンの城門
「結構人並んでるなー」
城門にはめっちゃ人が並んでいる。主に荷馬車が。
「かまへん、かまへん。うちらは商売で来てる訳ちゃうから、あっちからサクッと入れるんやでー」
なんかピオンが違う人に見える。いつもは黒装束で滅多に喋らないのに。今のギャルっぽい格好に引きずられてるんだろうか? なんか冒険者でも、武器鎧で武装したらいつもより勇ましくなるって話もあるし。制服効果ってやつだ。もっともピオンは制服じゃないけど。
「こっちや、あっちは商売する人たち専用や。あそこで税金払わんと中で商売できへんのや。うちらはあっちやでー」
ピオンに引かれて大きな門の隣の小さな門に向かう。まあ、小っさいと言っても大きめの馬車が通れるくらいある。並んでる大っきい門は馬車四台は並べられる幅あるもんな。その上にさび付いた落とし格子があり、それが長い間使われて無い事を物語っている。
「おっ、ピオンちゃんじゃないか。久しぶりだなー」
槍に鎧の門番さんがピオンに話しかけてくる。
「おっちゃん、久しぶりやねー。うち、遠く、なんと王国に今住んでるんよ」
「まじかー。なんでそないな遠くに?」
「決まってるやない。儲かるんよ」
ピオンは右手で輪っかを作った銭サインを出す。
「うち、今、冒険者してるんよ。ここらには迷宮あんま無いけど、あっちにはぎょーさん儲かるとこ沢山あるんよ」
「ええなー。俺にも紹介してくれよ」
「無理無理、おっちゃんがここ止めたら、誰がここ守るんよ」
「せやな。三国無双の俺が居なくなったらここモンスター通り放題になってまうわ」
「何ゆーてんの。ここモンスター来た事も何年も無いでしょ」
ピオンは門番の手を包む。おっ、袖の下ってやつか? 腐ってるなー。
「厳しいなー。ピオンちゃん景気ええのな。ほな友達も一緒に通ってええでー」
僕らはピオンについて城門をくぐる。
「何あれ、あんた誰?」
マイがピオンの裾くいする。まじでだ。
「んー、うち、昔、ここを拠点にしてたんよ」
僕は小声で話しかける。
「て言うか、お前、暗殺者だったんだろ。そんな目立ちまくって、陽キャな暗殺者どこにいてるんだ?」
うーん、妙に関西弁が攻めてくるな。
「ほら、全く暗殺者に見えないでしょ暗殺者っていうか、『陽殺者』。んー、あんまおもろないわ」
や、『陽殺者』、結構いける。ギャルやパリピの兄ちゃんが人が沢山いるとこで、敢えて仕事する。や、リスクが増えるだけだな。
「で、で、さっきの賄賂なの?」
なんか空気になってるアンが会話に入ってくる。多分ドラゴンには会話のテンポが速すぎるんだろう。
「ちゃうわ。規定の通行料よ。ああやって渡したら、なんかおもろいでしょ」
おもろいって賄賂って国次第じゃ捕まるんじゃないか? といっても鑑みるにこの国じゃ冗談でしたで、なんでも解決しそうだな。




