深淵への出発
何故、その建物が墓石と喚ばれるのかが解る気がする。巨大でのっぺりとしたギルド本部の建物は巨大な墓石に見えない事もないし、この街自体が数多の冒険者の犠牲の上に成り立っているからだろう。
軽く雑談しながら、冒険者ギルドの本部に向かう。入ってすぐの所は広い石造りのロビーになっていて人がひしめき合っている。
そこで、僕達は1人1人手続きをして木で出来た冒険者認識票をもらって首にかける。燃えない木で出来てるそうだ。
これは身元確認と実力確認のためで、申告した職業、名前、年齢、性別、種族が刻まれていて、実績を積むとランクが上がって素材がいいものになるらしい。認識票の事はドッグタグという俗称を持ち、みんなタグと呼んでるとの事だ。
そのあと、パーティー登録をして、迷宮利用手続きをした。手続きは任意だけど、入る時出る時にしないとランクが上がらないとジブルが説明してくれた。
「あとは、ザップ、素材沢山持ってたでしょ、迷宮内でも売れるけど、たたかれるから売るものあったら売ったがいいわよ、中でもお金使う事あるから」
ジブルの勧めで、買い取りカウンターに向かう。ヘルハウンドを二体売って、ミノタウロスの角も出したけど、気が付くと回りに人垣が出来てたので、四本で我慢した。今は目立ちたくないけど、やはり収納持ちと言うだけで目立つみたいだ。念の為、収納の魔道具を持ってるように偽装する。
ようやくギルドでする事が終わったので、ロビーの横にあるカフェで飲み物をいただく。みんなにジュースを頼む。
「それでは、みんなで無事にここに戻って来て、今晩はお酒をここでのみましよう。では、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
僕達はソフトにグラスをぶつけ合う。夜はジョッキを気持ち良く盛大にぶつける予定だ。
ギルドを後にし、迷宮の入り口の大穴に向かう。僕達はそのぽっかり空いたうす暗い穴に足を踏み入れる。道の両脇にはかがり火が焚かれている。道はなだらかなスロープなので歩きやすい。
ここでは入る者は僕達から見て左手、帰って来た者は右手を歩くしきたりになってるみたいだ。入り口は南に口を開けているけど、穴の東の方が屋台が多いのは帰還者狙いな訳か。
「ザップ……」
僕の左手をラファが握る。初めての迷宮。緊張しているのだろうか?
「大丈夫だ」
温もりが伝わって来る。やはり連れてくるべきでは無かったのではと一瞬思う。どんな事があってもこの子は守る。
「ザップー……」
僕の右手をマイが握ってくる。初めて入る迷宮。緊張してるのだろうか?
そんなはずは無い。利き腕が塞がるのは嫌だけど、振り払うのは危険の様な気がしてしっかりと握り返す。
マイも握り返してきて正直痛い。頼もしくなったもんだと思う。
けど、当然どんな事があってもマイは守る。もっとも実際は僕が守られる側かもしれないけど。スキル無しだったら僕よりもマイの方が強い気がする。
そんな事を考えながら、僕は両手に花状態で歩いていった。
ほどなくして、僕達の行く手は巨大な金属の扉に阻まれる。その横には人1人やっと通れるような通用口がある。ここで巨大生物を食い止めるようになってるみたいだ。
僕達は通用口を通り迷宮に踏み出す。
これからの冒険に僕は心が躍る。
エリクサーを取ってきたふりをするだけでいいのだけど、行ける所まで行きたくなってきた。
こうして世界最大と言われている冒険都市オリンピュアの大迷宮に、僕達は足を踏み入れた。
男1人にあとはみんな女の子のパーティー。当然ザップさん達は目立ってます。誰も声をかけてこないのは、ミケさんがいるからです。魔道都市の魔法戦士はこの街での治安維持とかにも借り出されてます。スイスの兵士みたいな感じです。
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