始まりの場所 3
「まずは、ザップさんが『言霊使い』って奴に襲われた事から始まったんだ」
パムが話し始める。その顔はいつになく真面目で別人みたく見える。ザップと『言霊使い』が戦って、ザップの仲間のマイさんがザップの首を刎ねて、ザップとマイさんが同時に首と体にエリクサーをかけたそうだ。そのどんな傷も癒す秘薬で、頭から再生したザップと、体から再生したザップに分かれたそうだ。訳が分かんない。なんの冗談なんだ? そして、パムは少し口をつぐむ。
「その、再生したザップの体側がカナンさんだよ。今の姿はザップさんのスキル『TS』だよね」
「そうだよ。僕は今、女の子に変身している」
「それは、『言霊使い』のサーチをかわすためでしょ」
まじか、そんな事まで読まれてたのか……
「でも、僕がザップ? その証拠は?」
「あのねぇ、僕らはザップさんに憧れて、その戦い方、癖に至るまで全部頭に入ってるんだよ。カナンさんの戦い方は、ザップさんそのもの。体に染みついた戦い方は記憶が無くても覚えてるものなんだね」
戦い方? そう言えば、戦い方の記憶は無いのに体が自然に動く。それに謎の怪力、とめどない収納スキル。僕がザップの分身だと思うとしっくりくる。
僕はどうすればいいんだろう。記憶が戻れば自分の居場所があると思っていた。けど、パムの話では、僕に過去は無かったって事だ。
「そうなんだ」
ライがこっちを見る。
「カナンって強過ぎるって思ってたけど、なんて言うか英雄ザップの子供みたいなものなのね。けど、そんなのどうでもいいわ。カナンはカナンだから。まずはミー達をなんとかしないとね」
そうだ。なんかこんがらがってしまったけど、やる事はシンプル。まずはミー達を何とかしないと。
「ん、ミー達って何?」
「あっ、パムは知らないんだったわね。言ってもいいでしょ?」
ライの言葉に肯く。ライが手短かにミー達の説明する。
「あっちゃー。早く言えば良かったのに。ここまで来なくても良かったのに。じゃ、その人達出して。オイラが回復させるよ」
「どういう事だ?」
「オイラはザップさんの収納スキルを借りてるんだよ。エリクサー、無限に出せるよ」
「「ええーっ!」」
僕、ディー、ライの叫びがハモった。
『私たち、結構グロい怪我してるから、あまり人に見られたくないです』
机の上に出したミーのポータルから、ミーの声がする。
「じゃ、オイラそういうの何とも思わないから、そうだね別室でやろうか」
なんかパムがそういう事言うと、すこしえっちな感じだけど、今のパムは真顔だ問題無いだろう。




