竜の意地
「助かったも何も。お前めっちゃ目を付けられてるじゃん」
僕はパムを見る。さっきのトロールを倒した勇姿は吹っ飛んでる。怯える小動物みたいだ。
「んー、約束したから案内はするけど、オイラは最下層には絶対行かないからな」
あのパムがビビるってアダマックスって竜はめっちゃ強いんじゃないのか? まあ、案内して貰えれば十分だけど。
「それにしても、イタズラしたお前もお前だけど、ここの迷宮主って奴、心狭すぎだろ」
供え物盗んだくらいであんなにキレるなよ。
「そうなんだけど、オイラが知ってる限り、古竜ってみんなそんな感じだよ。人間臭いって言うか情緒不安定って言うか」
それは、お前もだろという言葉を飲み込む。
「おい、パム。お主はわしに喧嘩売ってるのか?」
「そういえば、嬢ちゃんもドラゴンなんだよな。嬢ちゃんは全然問題無いよ。アンさんや、オブのクソガキや、脳筋ゴルドランとかそりゃひどいもんだよ」
「お主、ゴルドラン様にも会った事あるのか?」
「会うも何も、前にけちょんけちょんにやられたよ。オイラの攻撃全く通らなかったねー」
「そうじゃろう。ゴルドラン様は別格じゃもんな。けど、お主、良く生きてたのー」
「まあね。ゴルドランはザップさんがぶっ倒したからね」
「嘘じゃろ。人間がゴルドラン様を倒せる訳が無い」
「それが倒せたんだよねー。けど、ゴルドランってまだ能力の8割くらいって話だったけど、完全だったとしてもザップさんが倒したと思うよ」
「まじか。話半分だとしても、そのザップって奴は要注意じゃな。話は変わるが、ご主人様頼みがある。最下層でのアダマックスとの戦いはワシに譲って欲しいのじゃ」
気位の高いディーが僕に頭を下げてる。
「止めてたがいいんじゃないか?」
「何を言うてるのじゃ。これは竜の意地じゃ。こんなチャンス滅多にないのじゃ。アダマックスはまだ封印が解けとらん。それならワシにも勝ち目がある。弱ってる時に叩くのは勝負の鉄則。ドラゴンの世界はシンプル。弱い者は強い者に従うのみ。あのいけ好かないアダマックスのボケをしもべに出来ると思うと楽しみでしょうがない」
ディーは女の子がするべきじゃない邪悪な顔で笑ってる。竜の意地って意地汚いって意味なのか? 弱ってるから叩くって。けど、僕にはディーがお仕置きされる未来しか見えない。
「まあ、僕らの目的は最下層じゃないから好きにしていいよ」
僕らの目的はエリクサーだからな。その後は先生をどうにかするのと、『言霊使い』をなんとかして、平和に男で生活する事だ。




