貴様! 見ているなッ!
「貴様! 見ているなッ!」
いきなりディーがキンキン声で何も無い天井を指差す。見てるもなんも何もいねーし。大丈夫か? あ、けど、もしかして。心当たりがある。
「どっからか、ここの迷宮の主が見てるのか?」
「そうじゃな。間違い無くアダマックスがわしらを見とるのじゃろ。そうじゃないと、さっきパムが尻を蹴られてのが説明がつかん」
なんか、一方的に見られてるって嫌だな。
「どうやって迷宮主は僕らを見てるの?」
「ご主人様、知らなかったのか? 迷宮主はモニタールームで、迷宮の好きな所をいつでも見られるのじゃよ」
そういえばそんな話ディーが前にしてたな。あの時はあんまり気にならなかったけど。
「まじ、まじで見られてるの? アダマックスさんに!」
パムがめっちゃ驚いてる。どうしたんだ?
「うわ、ヤバいよ。ヤバいよ。オイラ、バチ当たりな事沢山してきたよ。今後は迷宮の中では大人しくしますので、アダマックスさん許してください」
パムは膝をついて祈り始める。さっきまでの威勢はどうした? 同一人物に見えない。
『ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない』
頭の中に声が響く。
「念話系のオプションじゃな。なかなかアダマックス、マナを無駄遣いしとるな」
ディーがギラギラとした目で笑ってる。陳腐だけど、血に餓えた狼みたいだ。
「見とるのじゃろ。アダマックス。幻体くらいは出せるじゃろ。姿を現せ!」
『最優パーティーのパム。私はお前の犯した数々の罪を許しません。私に供えられた饅頭を食べ尽くしたこと。私の像に添えられた賽銭を盗んだこと。あまつさえ、私の像の胸を触った事。例え神が赦しても、私は赦しません。相応の対価で購ってもらいます』
なんだそりゃ。パムって一流冒険者だろ。
「お前、なに子供のイタズラみたいな事してんだよ」
「オイラの心は子供だい!」
「嘘つけっ! もっと謝っとけ」
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
「おい! アダマックス。わしを無視すんな?」
『あらあら、誰かと思ったらシロブタじゃないの。存在感薄いから気付かなかったわ。また私と遊んで欲しいの?』
「シロブタちゃうわ。ディアシーだ! 見てろよアダマックス。お前の幻体をぐっちゃんぐっちゃんのけっちゃんけっちゃんにしてくれるわ。出て来やがれ」
『遊んであげたいのはやまやまだけど、今月は無駄遣いしたから、幻体は出せないわ。そうね最下層に来たら遊んであげられるわ。待ってるわよ』
「逃げるのか? この卑怯者!」
しばらくディーはアダマックスを挑発し続けたけど、もう声はしない。
「どうやら、オイラ、助かったみたいだな」
パムは立ち上がって膝をパンパンする。




