冒険の準備
「マイ、これで、ラファと買い物してきてくれ」
「わかったわ」
僕はマイにタブレットを渡す。
宿にチェックインして、その旨を書いたメモを収納からジブルのポータルに送った。
明日には迷宮に入りたいので準備が必要だ。僕達3人は必要な物を収納に入れてあるけど、ラファは、着の身着のままなので、その必需品をマイと一緒に買ってきてもらうことにする。
女の子の買い物は何時までかかるがわからないので、僕は宿の食堂でゆっくりすることにした。
食堂と言っても、カフェ兼レストラン兼バーの様な所だ。
「ザップも一緒いこー」
ラファが僕の手を引く。
「いや、誰かがここにいないとな。俺が残るからアンもミネアも好きにしろ」
僕はコーヒーを頼んでしばらく読書することにする。
ラファの買い物にマイとアンが付いて行き、妖精ミネアもコーヒーを飲んでゆっくりしてる。
なんかジブル達から連絡が来てるかもしれないので、ポータルに触れてる物を出してみる。
ワンピース?
「ぶふっ」
妖精がコーヒーを勢いよく噴き出す。
「ザップ、あんた何持ってるのよ、それってワンピースよね、しかもカップついてるわ、これってジブルの服じゃない?」
「え、ジブルの服ということは…」
「間違いなく、ジブルはどっかでぱんいちになってるわね。ぱんいち!ザップ、あんたポータルに触れてる物を転移したんでしょ、それで、ジブルはポケットか何かにポータル入れたのね。あんた達、まじ、ばっかじゃないの?」
う、我ながらポータルを渡して連絡するというのはいいアイデアだと思っていたのだが、こんな落とし穴があるとは……
すまん、ジブル……成仏してくれ……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「見つけたわ、ザップ!ぶっ殺す!」
マントに包まったジブルが突進してくる。跳躍してそのまま飛んでくる。
「うわ!見事な跳び蹴り、パンツは白ね」
妖精はコーヒーカップを持ってササッと避難する。
僕は指一本でその蹴りを受け止める。幼女に跳び蹴りされるなんて初めての経験だ。ジブルは華麗に着地する。後ろからミケが追っかけてくる。
「導師、はしたないですよ」
「ミケ、私は、殺す、こいつを!」
「何言ってるんですか、導師、ただ大通りで裸になっただけじゃないですか?」
「お前も裸で放り出したろか?」
いかん、ジブルの目は本気だ。
「すまん、ジブル。事故だ。けど、俺も悪いがお前も少しは責任あるんじゃないか?」
「………そういえば、そうかもね……」
僕はジブルに服を返して、着替えて来た時にはいつも通りのジブルだった。
それから、かなーり後にマイ達は帰って来て、妖精が余計な事にジブルのストリップ事件の事を話して、僕達の晩餐は笑いにつつまれた。ジブルは不機嫌だったけど、やっと仲良くなれた気がした。