荒野の死闘 5
「最近、回復が遅くなってきた」
先生は僕をかばい続ける。
「死んだふりしとけば、助かっただろ」
昔の先生ならそうしてたはずだ。
「そうだな」
そうだな、じゃないだろ。
「それか僕を気にせず逃げれば良かったのに!」
つい、声を荒げる。モンキーが何かを放ち、その度に先生が出血する。
「逃げる? 逃げてもつまんねーだろ」
逃げてもつまんない? 死ぬよりはマシだろ。
「今もまだ先生なら逃げられるだろ!」
僕は叫ぶ。先生、逃げてくれ。
「いやだね。今逃げたら、今までの事が全部嫌な事になっちまう。友達見捨てて逃げたってな。嫌な事って思い出したくないじゃねーか。おでは、おばえとの事をそうしたくない。逃げて忘れたくなるより、死んでも楽しかったなって思いたいんだよ」
えっ、先生が死ぬ。そんなはずは無いだろ。
「何言ってんだ先生! 先生は不死身なんだろ。こんなんじゃ死なないだろ」
今まで、先生は真っ二つにれても、ボロボロになっても回復してきた。今回もそうなるんじゃないのか?
「そうだな。おでは不死身だ。コナン安心しろ」
そうは言ってるが、先生は全く回復しない。このままだと先生が……
「ライ! ライ、起きろ!」
ペストマスクに乗っかってるライを呼ぶ。けど、ライは動かない。
「しぶといホブゴブリンだな。もう飽きた。頭をかき回してやる」
モンキーの指が先生の頭に向けられる。先生は荒い息をするだけで動かない。
「先生! 逃げろっ!」
先生は答えない。まずい。どうする、何か手は無いのか?
ドゴッ!
何かが飛んで来てモンキーにぶち当たる。モンキーは真っ直ぐに吹っ飛び、何者かが着地する。金髪のエルフ、デルさんだ。
「どうして忍者が?」
デルさんがこっちを見る。
「ホブゴブリンから、この娘を守ってたのか?」
助かった。けど、よろしく無い。間違いなく勘違いされてる。
「どうなってるの? これ?」
走って来た魔道士、ルルさんが口を開く。彼女たちは敵なのか味方なのか分かんない。慎重に言葉を選ばないと。まずは、ペストマスクだけでもなんとかして貰わないと、彼女たちでもあいつはヤバいだろう。
「お姉さんたち、そこ、『言霊使い』」
指差せないけど、伝わった。デルさんとルルさんはペストマスクの方を見る。とたんにデルさんは駆け出し、ライをのけて、ペストマスクの喉に手を伸ばす。
ゴキッ!
何かが潰れるような音。相変わらず彼女は恐ろしい。
「声は封じたわ。なにがあったのか説明して」
デルさんが僕の方を見つめる。なんとか助かったのか?
「面倒くさいわね。取り敢えず捕まえて連れてくわよ」
ルルさんがにじり寄ってくる。捕まえる? なんで捕まらなきゃいけないのか?
 




