王国へ 9
僕たちは荒野の街道をひた走り、やっと国境にやって来た。ここは『決戦の荒野』と言われている所で、つい最近帝国軍と王国軍との激しい戦いがあったそうだ。その戦いには、マリンとレイ・ライも参加してたそうだ。ライはあんまり話したそうじゃ無いので詳細は聞かない事にした。どこが国境かはここら辺は何もないので曖昧だけど、多分ここだろうという所にライが目星をつけた。僕らはライが地面に線を引いてその前に立ってる。
「よし、いよいよ王国だ。じゃ、せーのでみんなで踏み込むぞ」
僕らは線の前にならぶ。
「せーの」
みんなでジャンプして、王国へと飛び込んだ。
「王国、いいのう。なんか空気も平和な味がする」
ディーは深呼吸している。ブレスぶっ放したりしないよな?
「そんな違う訳ないだろ」
「分かってないのー、ご主人様はこの国には易々とゴルドラン様も入って来られないんじゃろ。これで下僕になる事に怯えなくてよくなるから気分の問題じゃわ」
んー、君、僕の下僕のようなもんだよね。そう言えば神竜王ってやつは、帝国の守護神で帝国と王国は仲悪いって聞いたもんな。だからこっちまでは来られないのか。
「そう言えば、今さらながら、帝国と王国って仲悪いって言う割には行き来自由過ぎない?」
僕に応えてライが口を開く。
「それは、この荒野を抜ける人はほぼ居ないからよ。ここら辺何も無いだけじゃなくて、飛龍の生息地が近いから普通は通んないわ」
「その割には居ないじゃ無いか、飛龍」
飛龍も何も、生き物全く見かけてない。
「それはワシのお陰じゃ。ワシの巨大な竜気に怯えて、そうそう魔物は襲ってこないぞよ」
ディーは胸を張ってるけど、なんか嘘くせーな。
「ご主人様、なんかあっちにいるぞい」
ディーが僕たちが向かう方を見る。なんも見えないぞ。
「人じゃな。真っ黒い服の。なんか引きずってるのー」
「旅人か?」
「黒い服ってまた忍者なんじゃないの? どうすんのよ」
ライが僕に裾クイする。
『多分そうね。先生出すわよ』
ミーの声がポータルからして、僕らの前に先生が現れる。
「んー、よく寝たよく寝た。ん、外か?」
先生に今までの事を軽く説明する。先生に頼まれて収納から金棒を出して渡す。
「で、敵って訳か」
先生は牙をむき出すと、金棒を肩に担ぐ。鬼、少し表情がだらしないけど、ぱっと見鬼だ。
「じゃ、私も準備しないとね」
ライはなけなしのズラを収納に入れると、見慣れた石仏に変身する。
「ワシもドラゴンになった方がいいか?」
ディーが自分を指差してる。
「もしもの時は頼む」
僕らは、黒装束が見えるという南に向かって歩く。




