王国へ 6
「何者かって聞かれても、あとは冒険者ってくらいかな」
「ご主人様、アイローンボーの臭いがする」
ディーが僕に耳打ちする。エルフさんの耳がピクピク動く。聞かれたか?
「白娘、なんでアン様の真名を口にした?」
エルフさんが近づいてくる。ただ歩いて来てるだけなのに、圧がすごい。『ゴゴゴゴゴッ』って擬音が聞こえそうだ。なんか近づいてくる度にその体が大きくなってるかのように錯覚する。
「ほう。あやつの加護もちか。『投擲必中』あんなしょっぼい加護を受ける物好きがいるとはな」
「貴様、何故それを。貴様、人間じゃないな」
「フフフッ。隠しててもばれたか。我こそは、遍く輝く古竜の一柱。『金剛の盾ディアシー』じゃ」
ディーは腰に手を当てて、エルフさんの前で薄い胸を逸らす。なんてかこのディーの空気読めない感が羨ましい。間違いなくこのエルフさんは強者。本能が逃げたがるような化け物だ。多分ディーより強い。
「ディアシー? 聞いた事ある?」
エルフさんは魔女に振り返る。
「さぁ? アンさんから聞いた事無いわ」
「そうか、お主らアイローンボーの仲間か。あやつはアンと呼ばれてるのか。あやつは永遠のライバルのワシの事をお主らに伝えとらんのか?」
魔女さんが顎に手を当てて考え込む。
「神竜王ゴルドラン、水竜王シルメイス、銀竜王アダマックス、黒竜王オブシワンならしってるけど、『であし』って名前は古今東西の文献でも見た事ないわね」
「『であし』じゃなくて『ディアシー』じゃ!」
「タワシ?」
「ディアシー!」
「タコあし?」
「ディアシー!」
「もやし?」
「ディアシーじゃ。全然違う言葉になってるわ!」
「んー、真っ白だからモヤシーでいいんじゃないの?」
「それくらいにしとけ、ルル」
エルフさんが前に出て来る。
「アンさんの事を知ってるって事は、他にも何か知ってるんじゃないか? すまないが教えてくれないか?」
「そんなんしらんのじゃ! 聞きたいなら、力づくで効き出すんじゃ!」
「ばっ、ばかっ!」
僕が止めようとするの虚しく、ディーは山猿みたいにエルフさんに襲いかかっていく。けど、その手は流され掴まれ、ディーは激しく宙を舞う。
「力尽く? 上等だな。私の名前はデル。森人格闘術の師範だ。軽くもんでやるか」
エルフさん改めデルさんはゴキュゴキュと指を鳴らす。怖ぇ。
「やりやがったな。古竜の体に土を付けた事を後悔させてやる!」
ディーは立ち上がり、デルさんと対峙する。このドラゴン辺り構わず喧嘩ふっかけて狂犬なのか? 見た目は真っ白で清純少女なのに……
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