王国へ 4
そして僕らは街で一泊して、街を出て更に南にひた走る。僕とディーは軽く馬車より早い。けど、ライは全力だと僕らに追い着けるがそれは1分も保たないから、今は僕の背中が定位置だ。石人の時と違って慎ましくも柔らかい物体が背中に当たってるから、そこまで不愉快じゃない。
「ディー、全力出していいか?」
「望む所です」
「えっ、まだ全力じゃなかったんですか?」
ライが敬語になってる。ひたすら走り続ける僕にリスペクトが芽生えたんだろう。石人じゃないライは軽いからまだまだ加速できる。
「行くぞーっ!」
何をするにも気合いは大事。
「カナン、もう十分早いですよ。止めときましょう!」
「いや、いっくぞーーっ!」
更に大声を放って加速する。まるで、空気が水みたいに体にまとわりつく。
「カナ、カナ、あぼばばばばばばーっ!」
ライが何か言ってる。加速する時に口を開いてるのが悪い。溺れた人のような声を出してる。髪の毛は垂直に後ろに撫でつけられ、目が乾くのでバチバチ瞬きしながら走る。瞬きするたびに瞼が裏返りそうだ。スカートも靡き捲れ上がって見た目が凄い事になってそうだ。めっちゃ邪魔だ。服、脱いだ方が早く走れるんじゃ無いかなー? 泳ぐときに着る水着が体にフィットする形な訳がよく分かる。今度大きな街についたら、全力走行するために水着を買おう。なんか足の裏が熱くなってきた。靴が摩擦でダメになりかけてるんだろう。収納に入れて裸足で走る。たまに石ころこか踏みつけるけど、少し痛いというか痒いくらいだ。なんか最近思ってたけど、僕に靴は不要だな。あくまでもファッションの一部だ。
後ろを見ると髪を靡かせ目を見開いて口から泡を飛ばしながら必死で走ってる残念な女の子がいる。当然ディーだ。可憐な面影は微塵もなく、鬼ババとかそう言う言葉が似つかわしい状態だ。あんなのに会ったら即逃げるな。という事は今の僕もあんな感じなのか? さすがにぼくは泡は吹いてないぞ。けど、宜しくない。全力ダッシュは人目が無い時だけにしよう。
「うるぼぁあああああーーーっ!」
ライが悲しそうな声上げる。
ぶっわっさーっ。
布が靡くような音に振り返ると、飛んでいく黒いもの。あ、ライのヅラだ。ライがあまりにも悲しそうな声を上げるから、しょうがないから、止まって拾いに戻る事にする。
「降ろして」
ライを降ろすと一目散にヅラ目がけて走っていく。ライはヅラを拾って、それは大事そうに胸に抱えて戻ってくる。ウィッグじゃないとか言ってディスってた割にはお気に入りだな。
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