王国へ 3
「どこが大っきい街なのよ」
ライがぼやいている。
僕らが今いるのは、森から南にかなり下った所にあるメルトランという街だ。この街は帝国の穀倉地帯のベッドタウンだそうで人口が多い割には栄えてない。城壁も無く平和な街だという事が伺える。ようは田舎だ。けど、確かに大きい。やたら立派な民家が立ち並ぶ大通りを通り中央広場に着き、その回りの商業施設をぐるりした。ライがご不満なのは、ウィッグが無かったからだ。つけまつげはゲットしてた。雑貨屋さんには最低限の化粧品や装飾品しか無く、欲しいものは帝都から取り寄せるしか無いそうだ。男性用の七三分けのカツラはあったので、それを装備してる。久しぶりの人間ライだ。かなりボーイッシュだ。
「ウィッグが無いなんて、どんな田舎なのよ」
んー、良くわからないけど、そんなものなんじゃないか? 需要が無いからじゃないのか?
「おい、ライ、そもそもカツラとウィッグの違いってなんなんじゃ?」
ディーが僕も思ってた事を聞く。ちなみにミーやアムドさんレイは話すと疲れるそうで、今は休息中だ。先生はどうしたんだろう。
「あんたたちそんな事もしらないの? カツラはハゲたおっさんがハゲ隠しに使うもので、ウィッグは可憐な乙女が髪型を変えるために使うものよ」
なんか奥歯にものが挟まったようなもどかしさを感じる。なんか違うようだけど、僕は詳しく分かんない。
「それなら、カツラでオッケーなんじゃないか? ライはハゲ隠しなんじゃろう?」
悪意を微塵も感じさせずディーが言う。
「あのねー。私はハゲじゃないの。変身したら髪の毛が崩れるだけなのよ。本当は上も下もフッサフサよ」
ん、なんか今、ライは不適切な事を口にしてたような? けど、ツッコんだら負けだ。女の子は女の子だけの時には結構えげつない事言うって噂は本当だったんだな。けど、僕は中身男だっつーの。
『もう、しょうがないわね。、あんたたちは』
僕の胸につけたミーのポータルから声がする。
『基本的にカツラもウィッグも同じようなものだけど、少ない髪の毛を補ってるのがかつら、気分転換やお洒落で違う髪型にしたい時に被るのがウィッグって言われてるわ』
「勉強になるわ。じゃ、ライの場合はかつらじゃのう」
ディーはこだわるな。
「ちょっと、私はスキンヘッドという髪型からお洒落のために被ってるからウィッグなのよ訂正しなさいよ」
ライも譲らない。
「どっちでもいいんじゃないの? 不毛な会話はもう止めよ」
「誰が不毛じゃ。生えてくるけと落ちるだけって言ってるでしょ。かつらとウィッグじゃ言葉のイメージが全然違うでしょ。かつらゆーたら、ハゲたオヤジ連想するじゃない!」
「けど、今、ライが被ってるのはカツラじゃろ。店員さんもそう言ってたじゃろ」
「だから、私が被ったらカツラもウィッグになるって事よ」
それから、しばらくディーとライはエンドレスにウィッグについて口論続けた。
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