地上に向かって 9
「おいおい、お前、独り占めする気かよ」
タイガーがシープに絡む。独り占めさせてやればいいのに。
「そんな訳無いじゃない。ふた、みんなで山分けに決まってるじゃない」
シープ間違い無く2人で山分けって言いかけて、僕らを見て言い直したな。
「おいおい、お前、俺らを眠らせて、かっぱぐつもりだろ」
かっぱぐ? なんかそれとなく意味は分かるけど、初めて聞く言葉だな。
「やーねー、そんな事するわけ無いじゃないの」
シープが普段見せない優しそうな笑顔。とことんゲスだな。その前にミスリルダンシングコインなんか要らないって。
「ああ、僕らは遠慮しとくよ、お前たちで仲良く山分けしろよ。いいよな、ライ」
「そうね。私もあんたたちに譲るわ」
もしかしたらダンシングコインじゃないかもしれないけど、ディーの部下のホネガラって奴は絶対に絶対にそんないい奴のはずがない。あれは間違いなく厄介極まりないミスリルダンシングコインだろう。喜んでシープとタイガーにあげるよ。むしろ貰って欲しい。ていうかアイツら索敵に長けた忍者の将なんだろ? アレが魔物って分かんないのか?
「え、本当。あんたら本当はいい奴? あ、私の強さに恐れをなした訳ね。いいわよそこまでいうのなら、全部もらったげるわ。迷惑料ってやつね」
シープが最高の笑顔を僕らにくれる。強さに恐れをなすもなんも、コイツ、睡眠スキル以外はカスのクソザコだろ。なんでそんなに自己評価高いんだろうか? アホの子なのか?
「今まで1回くらいはやってみたかった事あるのよね」
「ああ、俺も多分一緒だ。アレだろ。財宝にダイブして埋もれて手でワシャーってするやつだろ。物語とかでよくある」
シープとタイガーがお互い見合わせて肯く。
馬鹿が……
そして2人はコインの山に向かってダイブする。身体能力の差なのか、先に山に突っ込んだのはタイガー。ジャラジャラ音を立てて、2人にダンシングコインが飛びかかる。チーン。
「うっぎゃーーーーーーーーっ!」
ん、叫び声はタイガーだけ?
「何よコレ、痛い痛い」
いや、シープも食われまくっている。けど、顔だけはガードしている。さすが女の子。けど、ウサ耳にはお洒落なピアスが鈴生りだ。
「うおおっ、なんだコレ、固え、斬れん斬れんぞ!」
タイガーは爪を伸ばして踊っている。そうなんだよね。普通の武器じゃ毛ほどの傷も付けられないんだよね。タイガーはもはやコイン人間だ。けど、さすが十二神将。噛まれたとこは血が滲んでるだけだ。
「痛い、痛い、何よコレ。罠、罠だったの。悪質極まりないわ。殺す、ぶっ殺す。この迷宮作った奴、絶対ぶちのめす」
シープは顔を覆って踊っている。素早く動いてるけど、物量に押されて噛み付かれまくっている。
「それ、ワシなんじゃけど。プププッ」
ディーは失笑してる。




