野宿
「お前達、言わなくてもわかるとは思うが、姫様の事や移動中に起こった全ての事は他言無用だからな」
『承知致しました!』
満腹になって大満足の馭者達4人は敬礼する。4人にもドラゴン肉を食べさせたので、各々スキルが発動していた。涙を流して感謝している。彼らも一応軍人で、スキルアップで出世できるかもということだった。
「解散。自由にしてよし」
次はラファ姫様の所に行く。
「おい、ラファ、まずは魔法は禁止。魔法使ったら攻撃されたとみなしてお仕置きするからな」
「はい?ザップ、わたしにお仕置きしたいの?お仕置きしてもいいけど、遊びじゃすまないわよ、火傷するわよ」
おませすぎる言葉をつかうな。なんかおかしい、話が通じてないような。ラファは聡明な女の子なのに?
「!」
よく見ると顔が真っ赤だ。しかも呼吸が荒い。もしかして。
「おい、だれかラファに酒のませたな!」
「すみません、ザップさまー。あたしのお酒をぶんどられましたー」
若干へべれけなジブルが手を上げる。
「おい幼女!何酒のんでやがる。俺にもよこせ!」
ジブルは僕に鉄のボトルを差し出す。これは携帯用の水筒。いつも酒を常備してるのか?こいつ幼女なのにアル中なのか?
「ザップ様ーっ、あたしはこう見えても24才ですよぉ。成人、聖人様でーす!」
駄目だ。こいつはもう使い物にならない。僕は酒のボトルを奪い、中身をいただこうとする。
「駄目駄目!ザップはお酒禁止!」
マイが、疾風の様に現れて、酒のボトルを掻っ攫った。
「チッ!」
事ある毎にマイは僕の飲酒を邪魔する。まあ、酒癖の悪い自分が悪いのだが悲しいものがある。
ラファ姫はこのまま焚き火の前で皆で毛布に包まって野宿したがってたが、正直勘弁して欲しい。寒いのは嫌だ。
「おい、妖精、幻術で毛布に包まって寝てる俺をここに出せ」
「んー、ザップ。あたしは眠いのよ。面倒くさいわね」
そう言いながらも妖精は僕のリクエストにこたえてくれた。
「なんだこれは」
火の前に毛布に包まったゴリラが寝息をたてている。
「うわ、ザップ?なんか感じは似てるわね」
マイがマジマジとゴリラを見ている。あれはザップじゃねーよ。
「じゃあ、ザップお休みなさい」
ラファがゴリラに頭を下げている。なんか釈然としないが目的は達成されたのでよしとしよう。
僕は平たい所に家を出す。
「よし、今日は解散。あとはみんな好きにしろ」
僕は家に入る。ぞろぞろとみんな付いて来る。焚き火の前に残ったのは姫様とゴリラだけだ。まあ当然だな。
温泉を準備して、まずは姫様を起こして女性陣、その長風呂のあと僕と馭者たちの男性陣でゆっくり暖まった。ここら辺には温泉は無いらしく大好評だった。
「ラファ、ゴリラと一緒に寒い外で寝たいか?」
「んー、じゃあ、ザップと一緒に部屋で寝る」
ラファは窓の外のゴリラを指さす。まだ酔ってるのだろうか?ゴリラを頑なに僕の名で呼ぶのは止めて欲しい。
何とか野宿は免れた。女性陣はベッド、僕達はリビングに雑魚寝した。
余りにしつこいので、ラファのベッドの横にゴリラを移動させた。