フロアイミテーター 9
「これで最後だっ!」
僕は大上段にライを構える。
「おっけー!」
元気良くライが答える。
僕はライを最後のイミテーターに振り下ろす。
ドゴン!
ライの手刀が大地を叩く。イミテーターは飛び散り地面に大きな穴が空く。僕が手を離すとライは手で地面押して跳び、華麗に僕の隣に着地する。いい武器になったもんだ。けどその格好は激しい。服はボロボロでおへそ丸出しのタンクトップにベリーショートパンツになってる。けど、石人なのでセクシーさは皆無だ。なんか年月が経って雨風に曝されたお地蔵さんみたいだ。
タイガーとシープに食いもんを出してやり、僕はライを手にイミテーターを倒しまくった。なすがままに振るわれてたライも徐々に成長して自分から動くようになってきた。多分イミテーターを倒しまくってレベルアップしたのだろう。より固く、より強くなり、振るわれた時に殴りつけるまで成長した。
ゴロン。
地面に魔石が転がる。デカい。僕の頭よりデカい。一瞬新たなイミテーターかと思ったけど、収納に入れたら難なく入った。無生物だ。うん、デカい魔石だ。フロア掃討の証だろう。
『こりゃ、城が立つわよ』
ミーの嬉しそうな声がする。再びミーのポータルはライの額に付けている。忍者2人にバレないように小声だ。ちなみにもう一つミーのポータルは僕が隠し持っている。
『そうね、ギルドでもこんな大っきいの見た事ないわ』
次はマリンの声がする。
『換金したら幾らになるか分かんないわ。エリクサー買えるかも』
『そうだな。帝国には幾つかあるらしいからな』
アムドさんの声だ。若干震えてるように聞こえる。
「まあ、その前に忍者2人だな。みんな頼んだぞ。あ、来てる来てる。もう話すなよ」
忍者2人がこっちに向かって来ている。さすがにあんな遠くから声は拾えないだろう。
見渡す限り動いてるのは忍者2人だけ。床はイミテーターたちの汁でグチョグチョでぬかるんでる。ここ土で出来た丸い形のだだっ広い部屋で、壁の魔法の灯りが辺りを照らしている。壁の隅に降りる階段を見つけたから進みたいところだけど、あの2人の忍者をなんとかしないとな。
「おい、お前たち。ここを出るまで殺さないでいてやる」
まず口を開いたのはシープ。
「何もしないで飯ばっか食ってたのに横着だな」
ライが凄む。つるっぱげに赤く光る目におでこに魔方陣。妖怪にしか見えない。
「すぴー」
ん、寝息? 瞬時にしてライは寝てる。立ったまま。
「おいおい、勘違いするなよ」
タイガーが体の前で手を振ってる。勘違い?
「こいつの言葉を真に受けるな。こいつは照れ屋だからこういう言い方しかできねーんだ。要は、一緒に上まで帰ろうって意味だ」
シープが目を逸らす。まじか、面倒くさいヤツだな。
「ザップは居ない。裏切り者は始末した。俺らは戦う意味は無い。プロは金にならない事はしない。だから、水と飯の分、ここを出るまでは共闘する。そういう訳だ」




