馬車の中でのゲーム
「ルーンルンルンランラランラ♪」
魔道都市アウフのお姫様、ラファは座席で足をぶらぶらさせてご機嫌だ。僕達の馬車は6人乗りだったので、妖精が小妖精になって定位置のアンの頭に移動した。当然僕達以外の3人は狂喜乱舞した。ここら辺では妖精は珍獣みたいだ。
「なあ、姫様を変装させた方がいいんじゃないか?」
僕は収納から目だけ隠すマスクを何種類か出してみる。
「それは不要だな。姫様は公の場に出た事は怪我されてからはほとんどないし、ずっと包帯をし続けてたからな」
騎士ミケが腕を組んで口を開く。こいつの話し方はぶっきらぼうだが、卑屈で靴を舐めそうな勢いの導師ジブルよりは僕的には話やすい。
「それと、今からは姫様と言う言葉は禁止だ。危険回避のために姫様は今から冒険者のラファになってもらいます」
「ん、ミケ、今姫様って言ったよね?」
ラファがミケをじっと見る。
「あー、すいません、姫様、揚げ足を取るのは止めていただけないでしょうか?」
「おい、お前、また姫様って言ったぞ。お前が1番危ないんじゃないか?なんかペナルティをつけよう」
僕はジト目でミケを見る。こいつ、ただのポンコツなのでは?
「なんか、パパから聞いたんだけど、街中ではお酒を飲んでいる時にゲームで負けたらお酒をのんだり、服を脱いだりするのが流行ってるらしいわ。お酒は今無いから、あたしを姫様って呼んだら服を脱ぐというのはどうかしら?」
姫様は花の様な笑顔でゲスな事を言う。パパって王様だよな。娘に何の話をしているんだ……
「ひ、ラファ様止めましょう。そんな下品な事して何のメリットがあるのですか?女だけならまだしも、ここにはザップ様もいらっしゃるんですよ」
ジブルが姫様をたしなめる。当然だな。多分ジブルがこういうゲームには1番弱そうだ。それに幼女の裸には興味ない。
「ジブル。あたしはなに?」
姫様は笑顔でジブルを見る。
「魔道都市アウフのひ、第一位王位継承者です」
「あなたは?」
「魔道都市出入国管理部の部長兼魔術師学院の導師です」
「どっちが職位は上かしら?」
「ひ、あなた様です」
「上司の言うことは」
「絶対です」
「はい。では今からスタート日が暮れるまでね!」
軍隊かよ!
かくして僕達の闘いは幕を開けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
窓からは真っ赤な夕日の光がさしている。
僕の前には下着姿のジブルとミケがいる。予定調和だ。2人ともスタイルがよく、服で隠れていたけど、ジブルは異様に胸がでかい。やはり見た目通りの年齢では無いだろう。2人とも真っ赤な顔で胸を手で隠している。
「こら、ザップ。ジロジロ見ない!」
マイが僕の脇腹を直につねる。い、痛い。
ちなみに僕はぱんいちだ。金のパンツが夕日に輝いている。決して、女性たちにそれを見せて楽しんでる訳じゃない。言っちゃいけないと思うと思うほどどつぼにはまり、しかも妖精と姫様が精神魔法攻撃をしてくる。
「ザップー、何黙りこくってるの?あたしの名前はなーんだ」
姫様が僕を見る。その目が怪しく光り僕は今何をしてるんだ?目の前の少女が名前を聞いている。思い出せない。そうだ、彼女は魔道都市の姫様だ!まて、今僕はなにをしていた?そうだ、ゲームだ姫様って言ったら脱ぐ!
僕は何とかラファの精神魔法に耐えきった。危ない!あと少しで全てをさらけ出す所だった!
「あーあ、日が沈んだわ。終了ね。続きはまたの機会ね」
何とか僕は尊厳を守り通した。