フロアイミテーター 6
「そうね、私も一緒に戦ったげるわよ。あんたとだけどねっ!」
ライが僕の腕を振りほどいて、タイガーの方に駆ける。あっちゃー、共闘する気ナッシングかよ。
「タイガー、あの地蔵を切り裂くのよ」
シープはタイガーに隠れる。やっぱ地蔵に見えるよな。
「おいおい、見て無かったのかよ。あの石頭のねーちゃん、俺の爪、効かねーぞ」
「面倒くさいわねー」
ザザーーーーッ。
ライは突っ伏して滑って行く。
「お前も眠りたくないなら、働くのよ。周りの気持ち悪いの早くなんとかして」
シープがタイガーの後ろから出て胸を張る。改めて相性最悪だな。どういうカラクリかは分かんないが、シープは人を眠らせる。僕とライは全くレジスト出来ない。けど、シープは戦闘能力が低くて、タイガーと2人ではここを切り抜けられない。ここを凌ぐまでは共闘した方がいいが、終わった瞬間に僕らは眠らされて始末されるだろう。
考える事一瞬。またイミテーターがにじり寄ってくる。考えるのは後だ。とにかくここを切り抜けないと。
「暴れる! 巻き込まれるなよ!」
僕は床で眠ってるライの足を握り回転しながらイミテーターに突っ込む。
「ほー、豪快だねぇ」
「ほらほら、あんたも戦いなさいよ」
視界の隅で爪を伸ばしたタイガーが動き始める。
◇◇◇◇◇
「きりがねーな」
タイガーが呟く。
僕とタイガーでイミテーターを倒しまくり、かなりのスペースが出来たので、ライに牽制を任せて座って休んでいる。
「で、あれはなんなんだよ」
え、何か分からずに戦ってたのかよ。僕は軽く説明する。
「イミテーターか。いろんなものに化けてる魔法生物だよな。なんでこんなに居るんだよ」
「さぁ」
僕が聞きたいくらいだよ。
「おい、お前、なんか飲み物持ってないのか?」
シープが話しかけてくる。このあと僕らはやり合うはずだから、別にスキルを少し見せても構わないか。僕は収納から水筒を出してシープに投げる。シープは覆面を後ろにはだける。出て来たのはウサギのような耳。つり目で気が強そうな顔している。可愛い。
「収納持ちか。便利だな」
シープは躊躇いなく蓋を開けて水を飲む。
「おいおい、毒入ってるとか思わないのか?」
「ん、毒? 毒は私の好物だ」
ギャグなのか? 毒が効かないって言ってるのか?
「お前、シープなのにウサギなのか?」
「悪いかよ。シープってのは十二神将のコードネームだよ。そんなシープなんてろくでもない名前つける親なんていると思うか? けど、タイガーは本名もタイガーだけどな」
「おいっ、おまっ、言うなよ、コラッ」
「別にいいだろ、こいつらはこのあと迷宮の肥やしになんだからよ」
タイガーは本名なのか、どうでもいいけどイタい名前だな。
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