収納世界 1
更に下に向かう前に、僕はふと湧いた疑問を解消する事にする。
生き物が収納に入れられるようになったって事は僕も入れるんじゃないか?
僕は自分自身を収納に入れるように念じる。
白いどこまでも白い世界。光があるわけじゃ無い。けど、白い床下に白い空。空なのか分からないが、見上げると全てが白い。声を出そうとするが、出ない。多分、僕は僕自身の収納の中に入れたんだろう。僕自身を出すように念じる。辺りの景色がパッと切り替わり、元居た迷宮のボス部屋に居た。入れる事は分かった。しかも簡単に出られる。けど、僕が収納に入った時はどうなってるのだろうか? 時間は経過してるのか? もしかしたら、体は残って意識だけが入ってるのでは? それを調べるためには、誰か第三者に見てて貰わないとどうなってるのか分からない。先生かライを出してみよう。先生はかなりの大怪我してると思うから、出しても回復に時間がかかるだろう。時間に余裕があるわけじゃ無いからライを収納から出す。
「クー……」
「クー……」
つるっぱげの石人娘は可愛らしい寝息をたてながら立ったまま寝ている。そうか、石人、目方があって安定するから立ったままでも眠れるんだな。便利だな。
ぺしん。
軽く頭をはたいても起きない。
ベチン。
強く叩いても起きない。さすが石人。素晴らしい防御力だ。僕が叩いても蚊が刺したくらいの痛みしか感じないんだろう。鈍すぎだろう。
「こーちょ、こちょ、こちょ、こちょ」
僕はライの脇腹をくすぐってみる。ものは試しってやつだ。
「うきゃ、きゃ、きゃ、きゃ、きゃ」
なんと、ライは爆笑して体をくの字に曲げてその場に崩れ落ちる。弱点か。
「ちょっとー、なにしてんのよ。息止まるかと思ったじゃないの!」
「ちょっとー、じゃ無いだろ。お前が起きないからだろ。それより、話を聞け」
僕は今の状況を説明する。みんながやられて下に向かってる事を。
「じゃ、みんな死んだ訳じゃないのね。良かった。そうね、私たちにはシープって奴は倒せなさそうだから、それがいいかもね。じゃ、入ってるの見とくから、早くやっちゃいなさい」
「入ってるのを見るだとーーーーっ!」
大声と共に先生が現れる。首と胸から血を吹き出しながら。
「先生! 血ー出てる出てる」
僕は先生の胸の傷口を押さえる。
「大丈夫なの?」
ライは先生の首を押さえる。
「あれ、おばえたち何してんだ? なんか楽しそうな事やってるんじゃないのか?」
「先生、すげぇな。自力で収納から出てきたのか」
「なんかわからんけど、とにかく腹減った。なんか食わせろ。ライ以外」
「先生、それは酷いんじゃないの?」
相変わらず先生下ネタぶっ放しまくるな。絶好調だな。
なんか暗くなってた僕たちは先生の登場でそんなの吹っ飛んじまった。
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