下層へ向かって
「ゲッ」
つい、声が漏れる。タブレットの収納フォルダーを開いて中を見ると、みんなの名前が書いてある。
『【アムド】瀕死。【ミー】瀕死。【先生】瀕死。【マリン】瀕死。【レイ】瀕死。【ライ】睡眠』
ものの見事にみんな瀕死だ。けど、瀕死だ。死んじゃいない。どうにかしてここを抜け出し、エリクサーかそれに準ずる秘薬を手に入れたら助ける事が出来るかもしれない。
ん、よく見るとライだけ睡眠だ。と言う事はタイガーの爪はライに致命傷を与えられなかったって事か? それは朗報だ。けど、すぐには収納から出さない方がいいだろう。これからどうするか決めてからだ。
まずはどうにかして、ミーたちを助ける。収納が進化したお陰でなんとかなりそうだけど急ぎたい。ザップが居るのは南の王国。その王都に言って情報を集めてみよう。そのためにはここから出ないと。けど、上には忍者のタイガーとシープ。相手は忍者、気配察知に長けている。やり過ごして上に向かうのは難しいだろう。戦って倒せるだろうか? いや、出来れば戦わない方がいいだろう。もし僕が死んだら、ミーもマリンもアムドさんも死んでしまうだろう。今は僕1人の命では無い。危ない橋は渡らないに越した事は無い。
では、どうやってここを出る?
そうだディアシー。
前にここで遭遇した謎の少女。ディアシーはここの迷宮の主って言ってたよな。しかもマリン言うにはドラゴンかもって話だった。アイツに頼んだら安全に外まで運んでくれるんじゃないか? 下にはイミテーターがいるが、アイツに苦戦したのは仲間が居たからだ。僕1人だったら暴れまくって殲滅出来るはず。
そうと決まれば時間が惜しい。僕は収納から水を出して、少し喉を潤し、下層へ向かう。
地下四層、ガーゴイルの層を最短でくぐり抜け、地下五層への階段を下りる。地下五層は前に来た時と全く変わってない。アムドさんが言うには、五層にはイミテーターが居るって事だったけど。大きな扉を開けて中に入ると、少し前に倒したはずのタイタンがいる。こんな短時間でボスがリポップする事は無い。前みたいに扉が勝手に閉まらない。と言う事は、ここまで上がって来たイミテーターはタイタンに化けたっていうことか。んー、なんとも言えない。敵に化けても何のメリットも無いよな。ぶっ潰す。
ドッゴーーーーーーン!
一発。
タイタンに化けたイミテーターはグジュリと液体になって爆ぜた床に染みこむ。んー、やり過ぎたかな? もしかしたら本物のタイタンかもって思って力入れすぎた。




