国王からの依頼
「ザップー。やっと出られるわよーっ!」
通路の奥の扉が軋む音がしたかと思うと、マイが走ってきた。
「ん、なにしてるの?」
まずい、状況が良くない。鉄格子にしがみついている僕と、その前で泣きじゃくる少女。
「まて、マイ、俺は何も悪い事してないぞ」
「じゃあ、何でこの娘泣いてるの?」
マイが非難の目で僕を見る。
「それはだな……」
僕の言葉をキンキンした声が遮る。
「ラファ様!ラファ様!ラファ様!」
導師ジブルだ。叫びながら駆け寄って来る。
「ラファ様、足、それに顔も……」
ジブルは口を押さえ息をのむ。
「ザップがね、ザップがね、治してくれたの」
ラファは涙を拭ってジブルを見る。
「ええーっ!」
ジブルは僕の顔を見つめる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「改めて、自己紹介します。私の名前はジブル。魔法使いで風の魔法が得意です。あとの魔法もそこそこに使えます」
「私の名前はミケランジェロ。ミケと呼んでくれ。中級魔法と自己強化魔法を使う魔道騎士だ。よろしく頼む」
僕達は今、迷宮都市に向かう馬車に乗っている。街ではぐれた妖精ミネアも人間スタイルで同行している。
「改めてだが、ザップだ。荷物持ちだ」
「マイよ、戦士です」
「アイローンボー、大食いが得意です」
「ミネアです。みんなの心の癒しを担当してるわ」
なんか自由な事を言ってるが、一緒に戦ったら能力把握出来るだろう。
僕達は国王が評議会を通じて依頼した仕事を請け負った冒険者ということで身分を保障され解放された。
その依頼内容と言うのが、迷宮都市の迷宮の深層に潜って幻の秘薬エリクサーを取ってくるというものだ。
エリクサーを何故欲しいかと言うと、国王の娘、要はこの国のお姫様が、昔魔獣に襲われて大怪我をして、何とか命は繋いだが、どんな魔法でもその後遺症を治癒する事は出来なかった。
ごくまれに迷宮都市で見つかるエリクサーなら治せるかもと言うことで、何組もの冒険者を派遣したがうまくいかなかったそうだ。
それでおかしな事になる。
お姫様もう、治してしまった……
けど、エリクサーを取りに行く事になってる。
協議の結果、しばらくラファ姫様には隠れてて貰って、速攻迷宮都市で迷宮に潜ってエリクサーを取って来た事にして、魔道都市に戻って姫様を治療したことにするということになった。
姫様が元気になったのがばれるかもしれないし、姫様を長く軟禁するのは可哀想なので、すぐに街を出た。魔道都市ではなにもしてない。牢屋で担々麺食ったくらいだ。改めて観光したい……
それで、一応ジブルとミケについてきて貰った。魔道都市に戻るのを止めた時のための、存在しないエリクサーの運び役だ。
そういうなんか訳の解らない理由で迷宮都市に向かう事になった。