第十七話 荷物持ち狩りを始める
「殺さなくていいの?」
「ああ」
「よかった! 人間と同じ格好してるから、魔物でも可哀想……」
僕は部屋のリザードマンを全て撲殺した。この階層は危険だ。確かこの部屋の次が階段だ。
ここまでは、ダンジョンの構造を考え、出来るだけ最短かつ一本道で挟撃されないルートを選んできた。
そういえば、今気付いたが、すらすらと頭の中にダンジョンの構造が入る。自慢ではないが、僕はそんなに頭はよくなかったはずだが?
下への階段を降りる。44層には今までの経験上、安全地帯がない。45層の階段の部屋は多分安全地帯なので、そこで小休止しよう。
「シルバーポーション、美味しかった。貴重なものをありがとう」
階段を降りながら、マイがぴょこんと隣に並び話しかけてくる。なんで、たかがポーションにこだわるんだ?
「ごろごろ落ちる。またやるよ」
「だめよ! 大切にしないと。ザップが魔物を倒してるからザップが飲まないと」
「飲み飽きた」
「えっ!!」
マイは黙り込んだ。なんなんだ?
階段が終わる。
「座って、これを食え」
マイにヘルハウンドの肉を渡す。リュックも出してやる。
僕は座ってしばらく目を瞑った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「行くぞ」
「うん」
多分、15分くらい寝てたのではないか? 頭がすっきりする。階段部屋を後にする。
肉はあと7食分だ。出来るだけ早くダンジョンを後にしたいが、もしもの事を考えて、2週間分くらい欲しい。2人で2週間分だから、77食分か。
それにしても、計算も早く出来るようになってる。レベルアップすると頭も良くなるのか?
ヘルハウンドを僕が斧でぶった切って皮を剥いだらだいたい5食分くらいしか残らない。ということは16匹くらい食べられる状態で狩らないといけない訳か。
一本道で小部屋にたどり着く。中央には馬くらいの黒い犬がいる。ヘルハウンド、僕らの食料だ。
ん、よく見ると大きい。ラッキーだ。食いでが有りそうだ。よく見ると頭が3つある?
「ザップ。ケルベロスよ! 無理だわ。逃げましょう!」
マイが僕のマント代わりの腰巻きを引っぱる。説明は面倒くさいな。マントを外し歩き出す。
「ザップーーーーッ!」
マイが叫ぶ。
そうか、こいつがケルベロスか。初めて見たが大してヘルハウンドと変わらなさそうだ。
ヘルハウンド10匹くらいに何度も囲まれた事もある。それに比べて体が一つの分、与しやすいだろう。
3つの首が時間差をつけて火球を吐いてくる。球はヘルハウンドより大きいな。これはいい。次々に収納にいただく。近づいてハンマーで優しく頭を小突いてやる。そして距離をとる。もっと火を吐け。また3ついただく。
それを数回繰り返し、火球合わせて21個の所で、口から出るのは黒い煙だけになった。
意外に頑張ってくれたな。
根性見せてくれてありがとう。
お礼に苦しまないように3つの頭をほぼ同時に叩き潰してやる。
ビクンと痙攣してケルベロスは横たわった。