導師ジブル
「全く前後が逆になってしまったのですが、私の名前はジブル、ジブル・ウィンドメーカーと申します。もし差し支えなければ皆様方のお名前を教えていただけ無いでしょうか?」
幼女導師ジブルはそう言うと僕達に頭を下げた。もう、震えてない。美味しい食べ物は偉大だ。
「俺の名は、ザップ・グッドフェロー、マイとアンだ」
「ザップさんですね、それではまず、さっきの食べ物って何なのですか?」
まずは担々麺か、そんなに気に入ったのか?
それとも話を聞くための場を和ませるとっかかりか?
僕は担々麺とそのオーダーシステムの説明をする。
「マテリアル・ポータル……そんな強力なスキルを食べ物のために……」
「わかっただろ、俺の収納には危険な物は入っていない。お前だって見たんだろ。そろそろ、ここから出して貰えないか?」
「なにをおっしゃられてるのですか?危険と言うより信じ難いものばかりではないですか。正直、あなた様の処遇は私では決めかねます。すみませんが本当にすみませんが私の上司の決断を仰ぐまで、大人しく待っていていただけないでしょうか?」
何か卑屈だなぁ、まあ震えられてるよりはましにはなったが。それに更に偉い人が来るのか?なんか面倒くさくなってきたな。早く解放してくれないのだろうか。
「導師、あなた程の方がなんでそんなに、こいつに怯えているんですか?顔からしても無害そうじゃないですか?」
騎士ミケが僕を指差す。逆にこいつは少しくだけすぎだろ。
「ミケ、言葉をつつしみなさい!」
ジブルはミケをキッと睨む。
「この方の収納の中に何が入ってたと思うの。おびただしい程の魔獣の死骸と素材。それに、ドラゴン、ドラゴンが入ってたのよ!」
ジブルは目を剥く。見た目は幼女だけど、外見だけで実年齢は高いのではないだろうか?子供がこんなに人によってころころと態度を変えるのは見たことがない。
「何言ってるんですか?ドラゴンじゃなくて、でかいトカゲかなんかと見間違えたんじゃないですか?」
「じゃあ何、あたしが見間違えたっていうの?羽根生えて角生えたこの建物くらいあるトカゲみたいなのをドラゴンじゃ無いっていうの?じゃあ、なんていう生き物なのよ!それに水とか火とか訳解らないものも入ってて、容量がはんぱないのよ。多分やろうと思ったらザップ様はこの街全部収納にしまえるわ!」
「またまた、そんな訳ないでしょ」
興奮したジブルを手をパタパタしてミケが宥める。もう少し2人の茶番を見ててもいいが、マイとアンが退屈し始めているように見える。
「おい、ジブルわかったから早く上司とやらに話つけてこい!」
「はい!かしこまりました!」
導師ジブルは弾かれたかのように走り出し部屋を出ていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「………」
そして、今僕はさっきより綺麗だけどより頑強な牢獄に移送された。毛の長い絨毯、ふかふかのソファがあるが、入り口はぶっとい鉄格子に阻まれている。話では王の離宮の地下らしい。マイとアンは客人扱いということで、僕とは隔離された。
「おい、誰かいないのか?」
声は無い。見張りもいないのか。それほど警備に自信があるということか。
なんで僕がこんな目にあわないといけないんだ?少しづつ怒りがふつふつと湧いて来た。