牢屋での食事
「よし、とりあえず飯だ!」
パン、パンッ!
僕はかしわ手を打ち、立ち上がる。
まずは牢屋の中央に机を出して、紙を出し『担々麺5杯』と書く。
タブレットで確認して担々麺屋のポータルに紙と料金を送る。
収納には100杯の担々麺が入ってるけど、これは有事用だ。王国を出る前に隣町の担々麺屋にポータルを置いてきたので、店の営業時間内だったら作ってくれる。
部屋が手狭なので、まずは鉄格子を収納に入れる。
「な、なにっ格子が消えた!」
騎士ミケが驚愕で目を見開く。
「後で戻すから。それより、椅子持ってこっちに来い」
「はいっ!」
「はーい!」
良い返事で、導師とマイが来る。
「騎士さんも来いよ」
「ああ……」
僕はコップとそれに妖精の美味しい水を満たして配る。
タブレットを持って担々麺屋を確認すると丁度ポータルに一杯目を乗せた所だ。
僕は次々にテーブルに担々麺を並べる。どんぶりから湯気がたち、ゴマの香ばしい香りと唐辛子のヒリつくような匂いが立ちこめる。
マイとアンがキラキラした目で見ている。麺のどんぶりの下皿に箸とレンゲも添えてある。
僕とアンの椅子を出して座る。僕の行動を導師と騎士は呆気にとられて見てる。
「それでは手を合わせてください」
導師と騎士ミケも大人しく手を合わせる。
「「「いただきます」」」
僕達は担々麺を食べ始める。導師は見た目にそぐわずエレガントに箸を使っている。騎士は僕達を真似てるが握り箸だ。箸初体験かもな。
「初めて食べます。東方のヌードルですね。辛いけど、とっても美味しいです」
導師は目を細める。ドストライクだったみたいだ。
「なんだ?私は何してるんだ?牢で麺を食べてる?美味しい。美味しすぎる」
騎士ミケは一心不乱に麺を口に運んでスープを飲む。
そうだ!
ここの担々麺は魔法の担々麺だ!
食べ始めると止まんなくなるし、体が暖まって、誰にでも優しい気持ちになれる。
「ご主人様、替え玉いけるんですか?」
「ああ、幾つだ」
「4、いや5つでお願いします」
「まて、替え玉ってなんなんだ?素晴らしいものの気がする」
ミケが身を乗り出してくる。
「麺だけのおかわりだ。お前もいるか?」
「頼む!2つ頂きたい!」
ミケは勢い良く麺をすすり始める。これだけしか食べれないと思って味わってたのだろう。
「導師は幾つだ?」
導師の顔がぱあっと明るくなる。
「私も2つでお願いします」
「マイは?」
「2つ!」
マイはVサインをだす。
紙に『替え玉16、追いスープどんぶり1杯分』と書いてお金と一緒に送る。僕も替え玉2つと予備3つだ。
大根の漬物が送られて来たので待ってる間に皆でつつく。
替え玉が来て僕らは無言で麺をすする。ミケと導師は遠慮がちなんで、追いスープをかけてやる。予備の替え玉は導師が2つとミケが一つ平らげた。
「ごちそう様でした。ありがとうございます」
導師が頭を下げる。
「いやー、本当に美味しかった。満腹だ。もう食べられない。ありがとう」
ミケも頭を下げる。
担々麺屋の食器を送りかえし、その間にマイがコーヒーを並べる。
「それで、何の話からするか?」
コーヒーの味を楽しんだあと、僕は口を開いた。