牢屋にて
「ありがとう、暖まったよ」
僕は鉄のカップを女性騎士に返す。
「ありがとうこざいました。強いて言えば、具材がもう少し欲しかったです」
アンも格子からカップを返す。
「アン、贅沢をいうものではないよ。多分この人は役人だ。その薄給の中から僕達に施してくれたんだ。文句を言うとバチがあたるよ」
「失礼な、私の給料はそんなに安くない。なぜなら私はこう見えてもこの町のエリート、魔道騎士だからな」
女性騎士は椅子に座ってふんぞり返る。
「ふうん、魔道騎士って凄いのか?なんかグッとくるようなことやって見せてくれよ」
「そうだなあ、まあ見てくれ」
騎士は体をごそごそして、銅貨を取り出す。そしてそれを親指と人差し指で摘まむと、くにゅんと2つに折り曲げた。
「この町の中では全ての魔法が打ち消されるが、私達は魔法を使う事を許されている。自強化の魔法を常に纏っているから、こういう事もできる。あんまり舐めたまねはしない事だな」
騎士は完全に折り曲がった硬貨を僕達に見せつける。
「騎士さん、何やってるんですか!」
マイが怒って立ち上がり、騎士から硬貨をむしり取る。そしてそれを伸ばして元に戻して騎士に返す。
「お金を粗末にしてはいけませんよ。お金で遊ぶんでしたら、恵まれない方達に寄付でもして下さい!」
「ああ」
騎士はマイにびびってる。そりゃそうだ。曲げるのの百倍は元にもどす方が難しい。めたくそ力がいる。
「やっぱり、マイもこっち側なんじゃないか?」
「ザップ、何言ってるのよ、あたしは何の取り柄もない普通の安全な女の子だから牢屋に入る理由がないわ」
マイがきょとんとして僕を見てる。普通の女の子は硬貨を曲げたり伸ばしたりできないってば。マイにもコモンセンスを再確認してもらわないとな。
「それでですね、ご主人様が牢屋に入るのは納得できるのですが」
アンが僕の方を見る。
「おいまて!」
なんて失礼な!
「何で私もこっち側なんですか?」
アンが悲しそうな顔で鉄格子を掴み騎士を上目遣いで見上げる。なんかこいつ最近自分が可愛いと気づいたみたいであざとくなりつつある。
あざといと言えば妖精!
忘れてたけど、何処に行ったんだ?
「ああ、器具の故障だと思うが、お前からは異様なエネルギー反応が検知されたんで、一応そこに入ってもらってる」
「あ、騎士さんそれ大丈夫。器具壊れてないから」
「何言ってるんですかご主人様。故障に決まってるじゃないですか。私はただのか弱い女の子ですよ。どっかの人みたいに馬鹿力のゴリラみたいな事は出来ないですよ」
「誰が馬鹿力のゴリラですって!」
マイがゆらりと立ち上がる。これは血をみるぞ。巻き添えをくらわないように僕は牢屋のすみっこに逃げる。
「ミケ、そこにいるのかしら?」
ドアを開けて、小柄な女性が入ってきた。小柄なのに声が低い。見るととんがり帽子を目深に被っている。この街にはあんなだっさい帽子を被ってる人がまだいたんだ。よく見ると首からはドクロのネックレスそれに杖を持っていて、それにもドクロがあしらってある。絶対友達になったら良くない人種っぽい。
「あ、導師様!部屋の隅で縮こまってる奴が収納スキル持ちです」
騎士さんの名前はミケって言うのか。なんか猫みたいな名前だな。
「そうか、すまんが中身を改めさせてもらうぞ、収納解析」
導師は帽子を杖で上げる。幼女だ。幼女の目が赤く光る。
「はうっ!ど、どらごん…」
幼女はその場に倒れこんだ。
これから導師さんは準レギュラー並みに登場しますのでよろしくお願いします。
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