格闘人形
「カナン! つえぇーぞ!」
先生は吠える。うん、強い。人形は動きが滑らかだ。明らかに僕らに無いもの、『技術』を持っている。僕はハンマーを引き絞り人形に迫る。人形は僕の横凪ぎをすんででかわすと、あろうことかハンマーの頭を手でさらに押して加速する。思ってたより、加速したおかげでたたらを踏み、なんとか、踏みとどまり足を滑らせながら、背中に回った人形を振り返る。迫る人形の足、顔への回し蹴り! 体勢を整えたばかりで足が間に合わない。ハンマー両手で顔をガードする。手に重い衝撃が走り、なんとか耐えたら、腹に激痛。人形の拳がお腹にめり込んでいる。耐えるが、今度は後頭部に打撃が! 目から星を飛ばしながらも、人形に掴みかかろうとするが、スルリと抜けられて距離を取られる。
攻撃の威力は大した事無いが、確実に鍛えられないとこを狙って来やがる。二層のミミックに比べて大した事無さそうだと思ってた認識を改めないと。
「何やってるの、相手は一体でしょ。協力しなさいよ! 協力!」
ミーが叫ぶ。その通りだな。僕は先生を見る。そして二人でうなずき合う。
「いくぞ!」
先生は金棒を捨てて、人形に殴りかかる。だがそれは簡単にかわされ回し蹴りが先生に当たる。
ミシッ。
小さな軋む音。そうか!
僕は両手を下げてノーガードで人形に迫る。右ストレート。顔に刺さる。ボディブロー。食らっても下がらない。そして、人形は僕の腹を蹴ってさがる。それに同じくノーガードで近付く先生。さすが、以心伝心。先生もボコボコに殴られる。そして、次は僕がボコボコになぐられる。
「あんた達何してんの?」
「攻撃」
先生が答える。
「攻撃されてるだけじゃない!」
先生の頭に激しい回し蹴りがクリーンヒット。
バキッ!
人形の足が曲がる。今までの攻撃で弱った足がとうとう折れた。勝ったな。人形はそれからも頑張ったけど、僕と先生はしがみつき、バラバラにしてやった。首をはずしたら動かなくなった。
「タッチヒール」
マリンが僕の顔に触れる。腫れまくって熱くなってた顔にヒンヤリ気持ちいい。
「つぇえ奴だったな。マリンのファイヤーボールって凄かったんだな」
疲れた先生は床に大の字だ。
「まだまだ、修行不足ね。多分あたしじゃ手も足も出ない」
「まあ、僕らもちゃんとした攻撃、一回も当てられなかったもんな」
けど、とっても勉強になった。少しは強くなれた気がする。
「今のはウッドゴーレムだと思いますけど、普通はこんなに強く無いはずよ。やっぱり、この迷宮、なにかおかしいわ」
とは言われても、僕はここしか迷宮を知らないから分からない。




