傭兵都市
東方諸国連合の最も西に位置する、傭兵都市オリバン。またの名を剣闘都市。中央には巨大なコロシアムがあり、それによる賭博や剣闘士として一攫千金を求める者が大挙する。この町には世襲制の王は無く、二年に一回の大剣闘祭で世界各国から腕に自信がある者が集まり、それを勝ち抜いた者が出自種族に関係なく王になる。
剣一本で王になれる国、なんて夢があるのだろう。まあ、王と言っても実質はそこまで権力は無く象徴のようなものかもしれないけど、食うに困らない裕福な暮らしは約束されるだろう。
僕は王になる気は無いけど、なんかワクワクする。剣闘を見るのもいいし、目立つのは嫌だが、すこし出場してみたい気もする。
僕達は岩陰でアンに人間になって貰い、妖精の不可視化の魔法を解いて貰う。
「なんか聞いてたイメージと違うわね」
マイが城壁の方を見て言う。ちょうど僕もそう感じていた所だ。
目の前には、高い艶やかな緑色の城壁が日の光を照り返している。その奥にはちらほら先の尖った建物が見える。
傭兵都市と言うくらいだから、もっと無骨なものを想像していた。石造りの装飾よりも実益を考えた城壁の方がイメージに合う。まあ、けど、それは僕の勝手な思い込みなので、このお金かかってそうな城壁にも何らかの意味があるのだろう。
僕達は道なりに進み、城壁の通用門に並ぶ。僕達以外は商人風の者ばかりだ。まぁ、剣闘祭の時期ではないし、寒いから冒険者や傭兵とかはあまり出歩いてないのだろう。
「次の方どうぞ」
行列はほぼ滞る事無く進み。僕達の番になる。通行料の1人銀貨1枚を僕らは払って街の中に通される。
「え、チェックとかないのですか?」
マイが門番に問いかける。
「ここを通った時に魔法でチェックしてますので、それに引っかかったら別室に来て貰ってます」
線の細い、学者のような門番が答える。そんな華奢で細くて、傭兵や冒険者のトラブルに対応出来るのだろうか?けど、通るだけで安全確認できる魔道具を設置してるのは凄い。街が裕福なんだろうな。
僕は宿の前にコロシアムが見たい。街の中央にあるはずだから、太い道を選んで進んで行く。だいたい街の中央には教会があって高い塔があるので、そこを目指すと中央広場につくものだ。
意外に距離はあったが、難なく街の中央に着く。けど、コロシアムが見つからない。わからない時は人に聞く。そばに腸詰めを暖めて売ってる屋台があったので、人数分買う。
「すまんが、コロシアムはどこか知らないか?」
「コロシアム?ここにはないな。オリバンに行けばあるよ。けど遠いな。ここから遙か南だしな」
「ん、ここはオリバンじゃないのか?」
「あんた、何寝ぼけてるんだ?ここはアウフだよ」
『えー!』
僕らはどうやら道を間違えたらしい。