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 冷たい布団の中で


「ねぇ、ザップもこっち来たら、暖かいよ」


 露天風呂を楽しんだあと、しばらく暖炉の前で暖かいものを飲みながら読書して、夜も更けてきたので睡眠を取る事にした。


 寝室はめっちゃ寒かったので、暖炉の前に布団を2つ持ってきて、片方にはマイとアン、もう片方には僕が寝てる。妖精は既に暖炉の前でタオルっぽいものに包まって寝息をたてている。


 そこで、マイが僕を誘惑してる訳だ。


 寒い、正直寒い。防寒着を着て布団に包まってるけど、それでも寒い。よく考えたら僕達が今いるのは山の麓だ。春先でも寒くて当たり前だ。しかも僕達の家の構造は防寒を全く考えていなかった。いつか改造しよう。


「ご主人様、ご存じかもしれませんが、マイ姉様ってとっても暖かいんですよ」


 アンがマイの向こうからひょっこり顔を出す。しっかりと角当てもしている。


「そんなのしらんわ!」


「え、マイ姉様が昔迷宮で二人っきりだった時にはよく一緒に寝てたって言ってましたよ」


「え、ザップってマイと毎日寝てたの?うわ、やっぱほとんど夫婦じゃん。それで、何かしたの?したの?」


 アンの言葉に妖精が反応して目を覚ます。演技力がかなり高いタヌキ寝入りだったのか?


「何もしとらんわ、虫、黙って寝ろ!」


「こんな可愛いレディをつかまえて、虫はひどすぎるんじゃない。サル、サル、サル!」


 なんか虫が言ってるが、虫の言うことなので、無視する。


「虫を無視するって、あんたおっさんなんじゃないの?」


 ん、ミネアは何を言ってるんだ?


 心を読まれた?


「オイ、それは魔法か?」


「何のことかしら、人の心なんか読める訳ないじゃない!」


 まじか、そんな事もできるのか!


 何て危険な生き物なのだろうか?姿を消す事が出来て、実体のある幻術を使い、人間に変身してしかも人の心をよむ。虫と言うより害虫だな。


「何よ、害虫って!こんな可愛い妖精を捕まえて何いってんのよ。謝りなさいよ」


「ほう、読んだな心を。それはどういう魔法か教えて貰おうか。金輪際、飯抜きにするぞ!」


「ええっ、まって、まって、それは勘弁よ、これはリードマインドの魔法よ、この中では魔法抵抗が低いザップにしか効かないわ。この前故郷で発見して覚えて来たのよ凄いでしょ凄いでしょ!」


 この中では僕にしか効かない…


 なんて役にたたなくて、はた迷惑な魔法なんだ。


「ミ・ネ・ア、それは今後一切禁止な!」


「わかったわ、つまんないー、せっかく一生懸命覚えたのに…」


 妖精はぶーたれるとタオルに包まった。つくづく厄介な奴だ。危ない、危ない、心を読まれるってそんな事されたらおちおちエッチな事も考えられないじゃないか。


「ねぇ、ザップもこっち来たら、暖かいよ」


 また、マイが誘う。なんでそんなに誘うのか?正直訳がわかんないな?


「ご主人様、マイ姉様とっても暖かいですよ」


 そのセリフはさっきも聞いた気がする。

 

 むぅ、けど、なんて魅力的な誘いなんだ。


「ザップ、昔はよく一緒に寝てたじゃない。寒いんでしょ顔真っ青よ」


 マイが僕を上目づかいに見てくる。う、かわいい。猫耳がぴくぴく僕を誘惑する。


「な、何、言ってる。あれはマイが勝手に入って来てたんだろ」


 いかん、ここで誘惑に負けたら大事な何かを失ってしまう気がする。


 僕はマイに背を向けて頭まで布団に包まって目を瞑る。寒いけど我慢だ。


 いつの間にか僕は寝てた。


 目を覚ますと背中が暖かい。


 マイだ!


 とっても暖かい!


 結局こうなるのか…


 僕の抵抗は何だったのだろうか?


 僕はしばらく寝た振りをしてた。



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