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 雪


「ザップ、準備出来たわよ」


 寒さに強いマイですら、防寒着を着ている。それほどに寒い。


「「ありがとうマイ」」


 僕と妖精はハモって顔を見合わせる。


「ありがとうございます、マイ姉様」


 アンは着膨れしまくって、角には久しぶりの角当てもしている。ピンクの水玉だ。何気に可愛い。アンが言うには、角が冷えると頭の芯まで冷えて頭痛がするそうだ。


 僕達は家の暖炉の前に皆集まり縮こまっている。もうすぐ2月も終わるのに寒すぎるだろう。春は出会いと別れの季節。それに先んじて出発したわけだけど、いきなりの異様な寒さに歩いて行くのは頓挫した。


「うう、炬燵こたつ欲しいな」


「何言ってるんですか、解体したのご主人様じゃ無いですか」


 アンが僕を恨みがましい目で見る。


「今年はもう諦めるが、来年は家にもふかふかな絨毯と布団の最高の炬燵を作ろう」


「いいですね、それ考えただけでも暖かくなりますね」


「ちょっとそれよりも2人とも早く行こうよ」


 マイが僕とアンを急かす。何処に行くかと言うと、離れの温泉だ。僕らの中で1番寒さに耐性があるマイに準備してきてもらった。


 僕達は急いで温泉に向かう。何故急いでいるかというと、ただ単に寒いからだ。


「ザップ、タブレット」


 マイに言われて収納からタブレットを出して渡す。


「アンちゃんバンザイして」


「はーい」


「これをこうして実行」


 マイがタブレットをいじる。バンザイしてたアンが一瞬にして水着姿になる。オレンジ色のフリフリのついた可愛らしいやつだ。


「ん、マイ、何したんだ?」


「タブレットに、まず下着と水着を交換するように打ち込んで、服をしまうように打ち込んで実行しただけよ。やっぱりザップって凄いわ、あたしがこれを使っても打ち込んておけば見える範囲のものを出し入れできるのよ」


 なんだそりゃ、なんか僕より僕のスキルを使いこなしているような…なんか褒められたけど、僕は凄いのはマイだと思う。


 マイは手慣れた様子で僕と自分をタブレットで瞬時に着替えさせる。個人的には下に水着を着てると分かってても服を脱ぐ女性ってなんかグッと来るものがあるので、それがなかったのが少し悲しい。


 マイは真っ赤な水着で、心なしか水着が小さめな気がする。


「寒いから、暖色系でいってみたわ」


 マイが少し赤くなりながら、僕の前でくるりと回る。正直目を奪われてしまった。


「マイ、なんかはしたなくない?ザップを誘惑してるのね、それなら、いっその事水着脱ぎなさいよ。手伝ったげるわ」


 妖精がマイに飛びかかり、簡単に羽根を捕まえられる。けど、もう少し妖精には頑張って欲しかった僕もいる。


「あたしも変身」


 妖精から黒い煙が噴き出して、人間サイズのミネアが現れる。しっかり赤い水着を着ている。


「ザップ、あたしとマイ、どっちが可愛い?」


 この手の質問は勘弁して欲しい。


「2人とも可愛いよ」


 どっちと言ってもトラブルの予感がするから無難に答えておいた。



 僕達は手桶と石鹸と垢すりでしっかり体を洗って温泉に入る。


「暖かいわね」


「そうだな」


 僕は上気したマイの顔を見てつい逸らしてしまう。


「ご主人様、外、雪降ってきましたよ」


 アンの言葉で外を見ると、はらはら雪が降ってる。


 そうだ!


 僕は離れを温泉だけ残して収納にしまう。これで気分は露天風呂だ。


 空を仰ぐと無数の雪が舞い降りてくる。


「きれい……」


「そうですね…」


「当たり前じゃない、自然はいつも綺麗なものよ」


 いきなり寒くなったのには困ったけど、それもまた良かったかもと思える程に露天風呂で雪を眺めるのは素晴らしかった。



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