少女冒険者たちとの別れ
「ええ、じゃあ、新婚旅行じゃないなら今晩泊まってってもいいですか?」
少女冒険者4人の内の1人魔法使いのルルが僕に尋ねる。4人の中で、こいつが一番態度がでかい。それに胸もでかい。まあ、夜の荒野に少女をほっぽりだすほど僕は鬼畜ではないので、もともと提案する積もりだったけど。
「ザップ、いいでしょ、泊めてあげても」
「ああ、好きにしろ」
僕は読んでた本に目を向け直す。
「じゃあ、お風呂も借りていいですか?」
次は神官戦士のミカが僕に尋ねる。こいつも態度がデカイ。そして胸もでかい。
「ああ、好きにしろ」
そんなことわざわざ聞かなくても、僕が駄目と言う訳ないのにな。面倒くさいな。
「じゃあ、あたしたちもここに住んでいいですか?」
また、ルルが僕に尋ねる。そんなこといちいち聞かなくても…
「ああ、好きにしろ」
「え、本当にいいんですか?」
ルルが僕の顔を覗き込む。
「ん、なんだどうしたんだ?」
「あたしたちここに住んでもいいんですね?」
「え、何の事だ?」
会話を思いだしてみる。そういえば、ここに住んでもいいかって聞いてた気が…
「しょうがないな、住みたいなら好きにしろ」
む、もしかしてはめられたのか?なんか弾みで言ってしまったからしょうがない。よく聞いてなかった僕が悪い。
「おい、ルル、ザップ兄様を困らせるんじゃない。冗談っすよ、ザップ兄様、私たちはしばらく修行してからまた来ます。その時はよろしくお願いします」
アンジュは深々と僕に頭を下げる。これでしばらくは落ち着いた生活が送れそうだ。内心ほっとした。けど、結局は家に来るつもりなのか……
女性たちは皆温泉に向かい、僕は1人取り残される。やっと平穏がやって来た。その後僕は優雅に1人で温泉にゆっくり浸かった。
協議の結果、僕はソファで寝ることにして、皆は寝室へと向かった。ベッドは僕の部屋に1つ、マイとアンの部屋に2つしかないので、僕のベッドにマイとアンと妖精。マイたちのベッドに4人娘が寝ている。こんど立ち寄った町で寝具の予備も買わないとな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「では、またお会い出来る日を楽しみにしてます」
朝、みんなで仲良く御飯を食べて朝の日課の武器の素振りをして、僕達はそれぞれ出発することにした。
アンジュの言葉のあと、4人は僕達に深々と頭を下げる。その隣には収納に入れてたドラゴンの死骸がある。4人から借りてた分のドラゴンは結構な量から揚げにしてしまったので、これは前に迷宮で狩った新しい奴だ。
僕達は4人と1人1人しっかりと握手する。みんな小さい手にびっしりとタコが出来ている。勤勉な冒険者の手だ。
4人は一様に涙を浮かべている。冒険者は危険な家稼業だ。また、元気に会えるといいが。
「じゃ、またな」
「みんな元気でね」
「また、一緒に美味しいものべましょう!」
僕達は背を向けて歩き始める。
「また、会えるわよね……」
マイは涙ぐんでる。
振り返ると、四肢を広げたドラゴンが移動してるのが見えた。1人1本づつ足を持って抱えてるのだろう。あいつら本当に女子か?
「ああ、絶対また会えると思うよ」
あいつらはそう簡単にくたばる事はないだろう。僕は見なかった事にして歩き始めた。
アンジュ達少女冒険者4人ですが、何故かこのあと1番登場するのはエルフのデルさんです。