番外編バレンタインSS 荷物持ちチョコ貰う
「テェーィ!」
僕は掛け声と共にハンマーを振るう。
『てえぃ』
それに遅れて、マイ、北の魔王リナ、戦士アンジュを始めとする少女冒険者4人が斧を振るう。
僕達は今、宿の中庭で恒例の朝の素振りをしている。何故か今日は参加者が多い。
これだけの人数がいて、誰1人として剣を手にしている者はいない。剣でのエレガントな戦いより、斧で何も考えずぶった切り捲る。そういう脳筋な方しか僕の回りにはいない。
整ったプロポーションの美少女たちが巨大な斧を振り回している様はよく見るといやよく見なくても異様な光景でしかない。
回りを埋め尽くすギャラリーはとても多く回りの建物はパンパンで、もう一種の祭りみたいだ。食堂の従業員は出店をだして飲み物やから揚げなど売っている。
「よし、終わりにしようか」
僕はハンマーを収納にしまい、木に掛けてたタオルを手にする。
「ザップ、あ、あの」
マイがおずおずと話かけてくる。ん、マイが歯切れが悪いのは珍しいな。
「やっぱり、人が多いからまた後でっ!」
マイは、顔を赤くして走り去った。一体なんなんだ?
「ザップ兄様、待って下さい」
部屋に戻ろうとした僕をアンジュが引き留める。
「良かったら食べて下さい」
アンジュを始めとして、4人が僕に綺麗に包装された小箱を渡してくる。
箱を開けてみると、中身は甘い香りのする黒い物体が入っていた。
もしかしてこれはチョコレート!
聞いた事がある。近年王都で流行しているバレンタインデーという風習があり、その日は意中の人に女性がチョコレートをあげる事で愛を伝える事が出来るという。
そう言えば、今日がその日、2月14日だ!
「あ、ありがとう」
僕は声がうわずってしまう。もしかして僕は愛されてるのか?ギャラリーの目が僕達に集中する。正直ここから逃げ出したくなる。
「ザップ兄様、勘違いしないで下さいね、あくまでもこれはいつもお世話になってる気持ちです」
魔法使いのルルが赤い顔で言う。まあ、当然だよな。僕は箱を開けて1つ残らず食べ尽くした。彼女たちの気持ちを大事にしないとな。うん、甘くていい香りでとても美味しい。
「はーい、見ている皆さん方の分もありますよー!」
神官戦士のミカがまわりに手を振る。
「この、素振り祭りも残す所あと少し。皆様にも感謝の気持ちを込めて、チョコレートを持ってきました。欲しい方は並んで下さーい」
ん、何の感謝なのだろうか?
少女冒険者4人は袋を出して、並んだギャラリーの人々に1個づつ小さく包んだチョコレートを配っていく。人気者だな。
「ザップ、これは妾からの気持ちだ。いつもの感謝の気持ちだからな」
僕はリナに袖を引かれる。赤い顔した彼女に小包を渡される。ん、確かこいつ何も持って無かったような、こいつの収納って確かパンツだったような……
「ありがとう」
僕は礼を言い、少し複雑な気持ちではあるが全部食べた。異様に量が多く、正直少し気持ち悪くなってきた。
「ご主人様、感謝の気持ちですよ」
次はアンだ。また無駄に大量だったけど、頑張って完食した。
「ザップ!これ食べるのよ、勘違いしないでよね、けどまぁ少しは感謝の気持ちだから!」
妖精のミネアだ。正直勘弁してほしいけど、気持ちは大事だ。美味しそうな振りをして食べる。
「これ、良かったら」
メイドさんからも貰う。辛いけど笑顔で食べる。
「ザップさん!ファンなんです」
外で見たことない女の子に声をかけられる。えっ、僕にもファンがいるのか!笑顔で食べる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「やばい、死にそうだ…」
僕は部屋で横になってる。なんかやたら体が熱いし、クラクラする。短時間でチョコレートを食べ過ぎたからだろう。
コンコン!
ノックの音がする。
扉を開けるとマイだ。
「あ、あの、ザップ、今日ってバレンタインデーでしょ、いつもお世話になってるから、これ良かったら食べて……」
マイは真っ赤になり、僕に可愛い小箱を押し付けて走り去った。
僕は開けて見る。チョコレートケーキだ。結構量がある。正直勘弁してほしい。
けど、マイが心を込めて一生懸命作ったものだ。
僕は意を決してフォークを出し、切って取って口に運ぶ。
美味しい!
これならいけるはず!
僕は何も考えず、口に運び続ける。
ガツガツ食べて残りはあと一口だ。けど、なんか更に顔が熱くなり、クラクラがぐらぐらになる。
最後の一欠片を口にいれる。
「ブボッ!」
口が弾ける。
意に反して、胃から逆流したものを噴霧してしまう。
僕はその場に崩れ落ちる。
ああ、マイのケーキが……
本当にごめんなさい……
僕は知った。チョコレートとは危険な物なのだと。食べるのは今後ほどほどにしよう。
チョコレート、いっぱい食べすぎたら本当に体調を崩します。私チョコレート大好きなので限界にチャレンジしたら凄い悲惨な事になりました。
みやびからのお願いです。
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