番外編SS 荷物持ち少女冒険者達に対決をせがまれる
「あ、あの、ザップ兄様、しばらく会えなくなるので、私達と1回本気で戦って下さい。お願いします」
少女冒険者4人のアンジュはそう言うなり、僕の前で土下座する。後の3人もそれに続く。なんで戦わなきゃならんのだ。こいつら戦いの事しか頭にないのか?脳筋過ぎるだろ。みんな可愛いのに残念だ。
ここは、町の少し小洒落たカフェだ。僕はマイとアンと軽食を取った後コーヒーを嗜んでた所だ。正直こんな所でいたいけな少女達に土下座されたら困る。往来の多いテラス席なので、人の目を引く。けど、悲しい事に店員も通行人も軽く見るだけだ。
末期的だ…
最近の僕の身の回りには金の下着の痴美少女魔王がいたり、あり得ない程の食事を貪る角の生えた美少女がいたり、やったらうるさい妖精が飛んでたり、正直非日常が日常だ。
回りの人々はこんな感じで思ってるはずだろう。
『あ、ザップが少女を土下座させてる。ザップだしいつもの事だしな、今日は大した事無いな』
僕は一応良識人のつもりなので、こういう環境はいたたまれない。泣きたくなる。
「ねぇ、ザップー、こんなに頼みこんでるのだから、少しだけ本気で戦ってあげたら?」
マイが僕の顔をのぞき込む。ち、近い!
「ああ、そうだな、お前達ここで全部服を脱いで全てをさらけ出したら相手してやる!」
どこからともなく声がする。聞いた事のないけど、どっか馴染みのある男の声、もしかして僕の声か?
マイの顔が豹変する。冷たい風が吹き始める。少女冒険者達は顔を見合わせて、ゆっくり服を脱ぎ始める。
「ザップ!」
「待てっ、俺は何も言ってないっ!」
待てよ、僕は目を瞑り、五感を研ぎ澄ます。風が動いた!
「ソコダアァ!」
僕は目を開けて空間の一点を掴む。
「キャアアアッ!何で分かったの?ザップ、獣、獣なのね!」
何か訳の解ららない事をわめきながら、僕の手の中で妖精がもがく。全ての元凶はこいつだ。
「マイ、こいつが僕の声色を真似たんだ。お前達服を脱ぐな」
「違うわよ!ザップの声を魔法で出したのよ、透明化の魔法と、コピー音声再生の魔法、複合行使できるのはあたしくらいよ!」
「いばるな変態妖精!マイ、こいつにきっついお仕置きしてやってくれ」
「ザップ兄様、せめて下着で勘弁してほしいっす」
アンジュ達が僕の近くに寄ってくる。
「アンジュ!だからな俺じゃない。服を着ろ」
「では、戦ってくれるのですね」
「夜の戦いならいつでも思う存分相手してやる!」
僕の手の中の妖精がまた悪さする。いい加減僕の声色で変な事を言うのは止めて欲しい。
「はい!夜の戦いも4対1でいいのですか?マイ姉様の許可は要らないのですか?」
魔法使いのルルが手を上げて言う。ついつい大きな胸に目がいってしまう。
「今のも俺じゃない!」
もう、どうしようも無い。カオスすぎる。解決法は……
「あ、ザップ兄様が逃げた!みんな追っかけて戦うぞ」
下着姿のアンジュ達が僕を追いかけてくる。ああ、また晒し者だ。
空気抵抗ゼロの荷物持ち走りでなんとか4人を振り切った。