番外編SS 荷物持ち旅立ちの事を切り出す
「それで、そろそろこの町を出るが、お前たちはどうする?」
食事が終わり、コーヒーを飲んでいる。僕は女の子たちのとりとめの無い話が途切れたタイミングでうまく話を切り出した。結構時間が過ぎている……
ここは宿屋の食堂で、僕とマイとアン、そして少女冒険者四人組と妖精のミネアと自称北の魔王のリナがいる。みんなで集まる事は余りないので、あらかじめ時間をこの昼食のために作ってもらった。
しばらく静寂が流れる。
「あたしは付いていくわよ。別に行く当てないしねっ」
ミネアは髪を指でもてあそびながら口を開く。ちなみに人間バージョンだ。タイトなワンピースが豊満でメリハリのあるボディを際立たせている。
「ついてくるのはいいが、色々働いてもらうぞ」
「おっけーよ」
そう言うとミネアの姿は掻き消え、代わりに現れた手のひらサイズの妖精が蝶のような羽をはためかせてアンの頭の上に座る。アンとミネア、仲いいな。
「私はついていくもなにも、仲間でもなんでもないし、毎朝素振りに参加してるだけだ」
自称魔王のリナが退屈そうに言う。もしかしたら、こいつは完全脳筋で落ち着きないから、座ってるのが苦手なのでは?
格好はいつも通りえげつない。金のビキニアーマーのみだ。
もしかして服をもってないのでは?
最近は近所のおばちゃんによく絡まれてるのを見る。
ガン見すると、マイの視線が痛いので横目で見ながら話すことにする。
「じゃ、お前とはここでお別れだな。強い魔王になれよ」
「ザップ、何を言っておる。冷たい奴だな、こっちをしっかり見て話せ。照れる年でもないだろう。それに、同じ下着をつけてる仲ではないか?」
ん、なんか寒気が……
マイの方から冷たい風が吹いてるような。怖いのでそっちは見ないようにする。
「紛らわしい言い方するな。確かに金のパンツは穿いてるが、お前の言い方だと下着を共有してるみたいじゃないか。当然ながら俺はお前のビキニアーマーをつけた事は無い」
「確かに……言い方が悪かったな。お揃いの下着を着てる仲ではないか。それに魔王同士だし」
むぅ、訳が解らない。なんか仲間ではないって言ってるのに、同じ下着の仲だとか支離滅裂だ。構ってほしいのか?それともついて来てくれとでも行って欲しいのか?
けど、正直勘弁して欲しい。
こいつは可愛いんだけど、羞恥心とか良識というものが欠如している。どういう育ち方したのだろう?こいつと一緒に行動したら目立ちすぎる。いい意味で目立つのさえ苦手なのに、晒し者として目立つのはもう論外だ。
「まぁ、それに、ザップの家に私の家からのポータルを設置したから、旅にでても何も関係ないのだ」
「お前、いつの間に……」
「マイには確認とったぞ」
「え、マイ?」
「ごめん、ザップ、ばたばたしてて言うの忘れてた」
マイは張り付いたような笑顔で頭を掻く。機嫌はなおったみたいだ。
「では、私はもどるぞ」
少し憮然とした態度でリナは出て行った。難しいお年頃なのだろう。勘弁して欲しい。
「私たちはこの町に残ることにしたっす!」
少女冒険者四人組の多分リーダーの戦士アンジュが力強く口を開く。なにをそんなに気張ってるんだ?
「私たちはまだまだ弱いから、多分ザップ兄さん達と一緒に行ったら足手まといになると思うから……」
魔法使いのルルが顔を伏せて言う。
足手まといも何も彼女たちは十分に強いし、僕達は魔王退治の旅とかに出る訳じゃないので、戦闘力はあんまり関係ないんだけど。
僕は言葉を飲み込む。もし彼女たちがついてくるとか言い出したら、余り広くない僕達のログハウスは女の子ばっかりになってしまう。それはそれで悪くはないのだが、多分僕は刺激が強すぎて耐えられないと思う。マイの目も怖いし……
「ですから、もっともっと強くなってから、追っかけてきます!」
エルフの野伏のデルが両手を握りしめ僕、マイ、アンを順番に見ていく。
だから、十分強いって。
「そして、私達を世界征服のお供に私達を加えて下さい!」
神官戦士のミカが立ち上がり駆け寄り、僕の手をしっかりと掴む。それに他の三人が倣う。
何かの決起集会みたいだ。
「ん、世界征服?」
何か変な言葉が聞こえたような?
「ザップって、世界征服したいの?」
マイが光り無い目で僕を見ている。
「いや、旅したいんだが?」
「え、旅って世界征服の旅ですよね?」
アンジュが僕に問いかける。
「世界征服。当然私も協力いたしますよ!」
アンがキラキラした目で僕を見る。
なんかおかしな事になってるので、問いただしたら、ミネアが四人組に世界征服の旅に僕が出ると言ってたそうだ。
いつの間にか、悪戯好きの妖精は消えていた。相変わらず、はた迷惑だ。
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