第十五話 荷物持ち狼狽する
「大丈夫か!」
僕は叫ぶが返事はない。
僕はマイに駆け寄る。
マイは目を閉じて、くの字になって横たわっている。
大丈夫な訳がない!
僕は右手を突き出し、収納から出したエリクサーを惜しげも無くかける。
「あたし、死ぬの? ゴホッ!」
マイは目を開けて口から血を吐く。
何故、すぐに治癒しない?
「グギャ!」
最初に殴りつけたリザードマンの一匹が起き上がる。クソッ、死んでなかったのか?
「うるさい! 消えろ!」
右手をリザードマンに向ける。
ゴウッ!
残り少ないドラゴンブレスで焼き尽くす。部屋にいた6匹も消し炭と化す。これで大丈夫だ。
エリクサーをかけているのにも拘わらず、マイからはじわじわと血が溢れている。
僕は馬鹿か。治る訳がない。槍が刺さっている。
「お前は死なせない! 痛むぞ! 耐えろ!」
僕はエリクサーをかけ続けながら、マイの後ろに回り、まずは肩の槍を抜く。思いのほか簡単に抜けた。
「クウッ!」
マイは軽くうめき声を上げる。まだ、声を上げるのを我慢してるのか?
「あと少しだ!」
次は腹部まで貫通している背中に刺さった槍を抜こうとする。穂先が引っかかってて抜けない! マイの前にまわり、穂先をへし折り、柄を掴み勢いよく引き抜く。マイの背中から血が飛び散る。
「クッ!」
マイはうめき声を上げるとビクンと痙攣し動かなくなる。
「マイ! スープを作ってくれるんだろ!!」
僕は叫ぶ。
気が付いたら、何故だか涙が溢れている。視界がにじむ。
出会って間もなく、大して知りもしないはずなのに、何故ここまで心をかき乱されるのだろうか?
よく見ると微かに肩が動いている。呼吸に合わせて動いている。
多分大丈夫だ。エリクサーをかけるのをやめる。
僕は収納からミノタウロスの腰巻きを出して、マイにかけてやり、目を覚ますのを待つことにした。