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番外編SS 荷物持ち 異世界召喚される3


 何もない薄暗い部屋にマリーの声が響く。


「まずは、ここからどうやって前に進むかだ。君達はこの魔法陣で来た訳だけど、僕達は上の階段から降りてきて、三人が降りたときに階段が消え失せた。壁や床を探ってみたが何もない。それに穴を掘っても塞がっていく」


 テーブルを片付けたあと、マリーは腕を組んで話し始めた。よく話す女の子だけど、なんと言うか違和感を感じる。理屈っぽいし、女の子特有の感情の起伏があまり見られない。冷静沈着でロジカル、何て言うか先生みたいだ。


「まあ、それは置いといてだ。一つ頼みがある。ウシオと力比べがしたい」

 

「もう、ザップ、こんなときに何いってんのよ!」


 マイが僕の袖を引く。けど、僕はウシオに興味津々だ。僕の渾身の一撃を無傷で受け止めた者など最近はいない。


「ザップ、気持ちは分からんでもないが、君も強いと思うがウシオも強いぞ。そうだな、相撲でどうだ?」


「相撲?どんなルールだ?」


 僕はマリーに聞き返す。


「僕が今から円を書く。それから出るか、地面に足の裏以外の体の部分がついたら負けだ。魔法、スキル禁止の本当の力比べだ。戦闘系の自動スキルはしょうが無いが。それ以外なら何でもあり。怪我しても何でも僕が回復するからな」


 そう言うと、マリーはなんか白い粉を出して地面に円を描いた。この相撲は聞いた事がある。東方の国のルールだ。僕とウシオは円の中に入る。


「はっけよい!のこった!」


 マリーの掛け声のあと、僕はウシオに強烈なタックルを放つ。このまま押し出してやる!

 ウシオはがっちりと僕を受け止めるが足が滑り地面を削り後ずさる。僕の勝ちだ。そう思った瞬間ウシオの全身が岩のように固くなる。線から出るギリギリで、ウシオは力で押し留まった。


「ザップ殿、素晴らしい。今度は私の番だな」


 ウシオが笑った。牛って笑うんだな。そう思った刹那、僕に右からの凄まじい力が襲いかかる。ただ膂力で僕を吹っ飛ばす気だ。舐めるな、片腕で叶うと思ってるのか。ただの力で押し返す。僕もウシオを右手でぶん投げようと試みる。なんと、力は完全に互角だ。僕らは組み付いて力を振り絞る。少しでも力を抜くとぶん投げられる。


「ちょっとー、なに男同士で抱き合って笑ってるのよ気持ち悪いしつまらないかしら」


 ベルという太った少女が文句言ってる。これは見世物じゃないっつーの。漢と漢の熱き勝負だ。


 けど、そろそろ限界が近いのも確かだ。


「どうりゃーーーっ!」


 僕は力を振り絞る。


「グァアアアアッ!」


 ウシオも吠える。


 けど、僕の勝ちだ!僕は力づくでウシオをぶん投げる。ウシオはもんどりうって円の外に出る。


 バキッ!


 僕の右手から変な音がして激痛が走る。上腕の骨が砕けた。この熾烈な戦いに耐えられなかったんだ。即座に左手で腕を整形してエリクサーで治癒する。僕はウシオに近づき右手を差し出す。


「勝負には勝ったが、実戦だったら負けてた。俺の利き腕がいかれてしまったからな」


「いいえ、負けは負けです。ありがとうございます」


 ウシオは立ち上がり僕の右手をしっかりと掴む。


「今のは完全回復魔法!ザップすごいかしら」


 ベルが僕の腕をさすさすしてる。よくみるとベルは太ってはいるけど、かなり整った顔立ちだ。


「ザップが苦戦するの久しぶりにみたわ」


 マイが駆け寄ってきてベルを抱き上げる。


「ザップすごいな、ウシオは正直ばけもんだぞ、さすが英雄と呼ばれるだけあるな」


 マリーが目を見開いている。恥ずかしいから英雄は止めて欲しい。


 そんなこんなで、僕らは打ち解けて部屋の探索を開始した。


 

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