番外編SS 荷物持ちピクニックにいく
「ザップ、今日は天気もいいし、外でご飯食べない?」
マイが部屋に入って来るなり口を開く。
僕は朝の素振りで、体を動かしたあと、アンの部屋で読書している。部屋にはあとドラゴンの化身のアンと、魔法使いのルルがいる。
「すみません、私は読みたい魔道書があるんで」
ルルは本から目を上げてマイに答える。
「そうですね、体を動かしたいですし、私に乗って散歩にでも出かけませんか?」
アンは立ち上がると、読んでた本を本棚に入れる。今日は温かいので着膨れてないし、角当てもつけてない。
「じゃ、お弁当持ってくるから」
マイは走ってどっかに行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「風が気持ちいいわね」
マイは風になびく髪をおさえて言う。
僕達は町を出て、ドラゴンに戻ったアンの背中に乗っている。
その歩く速さは巨体故に結構なスピードで、僕は少し肌寒い。一応コートを羽織って来て良かった。
「マイ、寒くないのか?」
マイの格好はチューブトップにショートパンツ。上からミノタウロスの腰巻きをマントの様に羽織っている。この前、もっといいちゃんとしたマントを買ってあげたのだけど、これがお気に入りらしい。
「うん、寒くないよ、ありがとう」
マイは事ある毎に『ありがとう』って言う。なんかいい感じなので、僕も真似しよう。
「よし、アン、ダッシュだ!出来る限り加速しろ!」
「グルルッ」
アンは振り返って、軽く頷きうなると、猛然とダッシュし始めた。
心地よい振動の中、眼下の景色が流れるように変わっていく。これは気持ちいい。
「キャアーッ、ザップ、怖いわ!」
マイがしがみついてくる。ん、マイって乗り物に弱かったかな?
「速度落としてもらおうか?」
「大丈夫、落ちないようにザップにしがみついとくから」
マイの目はキラキラしてる。楽しんでるならまあいいか。
しばらく、アンの乗り心地を楽しみ、丘に登り景色がいい所に来たので、ストップをかける。アンには人型に戻ってもらい、敷物を敷いて座りマイの弁当を開ける。
サンドイッチだ。柔らかいパンに色々な具材が入っていて正直美味しい。飲み物は今僕のお気に入りの妖精の国の泉の水だ。
「美味しい水ね」
「マイのサンドイッチが美味しいから特にそう感じるんだと思うよ」
「ありがとうザップ」
「こちらこそ、ありがとうマイ」
僕らはしばし見つめ合う。
「あの、盛り上がってる所悪いのですが、なんか騎士っぽい人達がめっちゃ急いでこっちに来てるのですが」
アンの指刺す方を見ると確かに騎兵が見える。一瞬僕は身構えるが、あれは僕達の今いる町の騎士の装備だ。
「ザップ!敵は何処だ!」
フル装備のカイゼル髭の領主が馬から降りて僕の前に立つ。
「敵?何の事だ?」
話を聞くと、町の警備兵がアンに乗って疾走している僕達を見たらしい。それで何かが攻めて来たと勘違いしたらしい。
そりゃそうだな、僕でもそう思うわ……今度からは気をつけよう。
僕は領主に謝り、そばに川があったので、河原で領主と騎士達にバーベキューを振る舞った。