番外編SS 荷物持ち妖精の国へ(続き)
すみません。書いてる途中に寝落ちしました(>_<)
「ティフォンってなんだ?」
「ティフォンはティフォンよ、あんたその年まで、ティフォンも知らずに生きてきたの?信じられないわ」
やっべーこいつまじでうぜー!
「知らねーから聞いてんだろ!四の五の言わず答えろ!無駄口ばっか叩いてたら、家帰って寝るぞ!」
僕は地面に寝っ転がる。
「解った、解ったわよザップ、寝ないで、寝ないで、ティフォンは嵐の妖精よ、今ここで暴れまくっているのよーっ!このままいくと、妖精の森は壊滅してしまうわ!」
ミネアは僕の顔のまわりをパタパタ飛ぶ。うっさくてうざい奴だな。
「解った、解ったから」
僕は起き上がり、ミネアについて行く。
ついた先は木々が開けて泉がある所で、木に鳥の巣箱みたいなのが幾つもついている。その丸い穴から妖精たちがわらわら出て来る。木漏れ日が妖精達の羽にあたり、キラキラ反射している。幻想的でとっても綺麗だった。妖精達が口を開かなければ。
「なにこれ、ひっさしぶり人間見たわ!」
「きったな、野蛮ねー」
「うわ、馬鹿そうな顔」
「臭っ、獣臭いわーっ」
「きゃー見て見てこいつ、パンツ穿いてないわよ!」
皆近寄って来たかと思うと口々に僕をディスっていく。何か僕こいつらに悪いことしたか?
「まあ、まあ、みんな落ち着いて、確かにザップは人間の中ではこきたないけど、見た目に反して強いのよ!ティフォンを退治させるためにわざわざあたしが連れてきたのよ!」
ああ、ミネアの言葉もフォローになってない。すこし傷つく。今すぐ帰りたい。
「なあ、帰っていいか?なんか気がのらないな……マイとかアンを呼んでくれよ……」
「うわ、ザップのエッチー、マイ姉様や、アン様を呼んで裸を見たいのね!だめ、だめよ、ここでそんなふしだらな事はさせないわ!」
ミネアが僕のまわりを飛び回る。
森の中の泉のまわりに妖精が飛び回っている。普通だったら幻想的で素晴らしい光景だと思うが、正直ここらを焼き払いたい気持ちだ。
「頼む、勘弁してくれ。ティフォンって奴をたおせばいいのか?早くそいつの所に連れていってくれ……」
「解ったわー、ティフォンはこっちよ、ついて来て」
一人の妖精が近づいてくる。やっとこのプチ地獄から解放されそうだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それで、ティフォンってどういう格好なんだ?」
「解らないわーっ!」
案内してくれてる妖精が答えてくれる。
「なんでだ?訳解んないものを倒せるか?」
「しょうが無いじゃない、風が強くて近づけないんだから」
ぼくは恐ろしい想像をする。ここで見た妖精は女の子ばっかだ。もしかして、ティフォンって女の子なのでは。イメージ的に勝ち気な感じのじゃじゃ馬娘なのでは?僕は女性をいたぶる事は出来ない。その時はどうしよう…
「見て見て、あれがティフォンよ!あとはよろしくっ!」
言うだけ言うと、妖精は逃げてった。
僕達の前には、竜巻みたいな大きな空気の渦が見える。
「じゃ、ザップ頼んだわよ!」
ミネアは僕の肩に座る。しょうが無いな。僕は漏斗状の空気の渦に近づく。
そばに寄ると、渦の中心には巨大な影が。
「あれは、ティフォンのオリジナルじゃなくて、多分分身体ね。けど強いのは確かだわ。早くちょいちょいっとやっつけて頂戴!」
僕はもっと近づく。奴の全貌が見える。マッチョな髭面のおっさんの膝から下は蛇の群れ、肩からも無数の蛇が生えている。
「おお!ラッキー!おっさんだ!!」
僕はついかしわでを打つ。おっさんなら全力で倒せる!
「うわ、ザップ、なに喜んでんのよ、そんなにおっさんが大好きなの?最近ほもっぽいひげのおじさんと仲いいし……マイ姉様が悲しむわよ……」
う、いかん、ミネアが激しく勘違いしている。
「勘違いするな。おっさんだったら心おきなくぶっ倒せるって事だ。行くぜ!」
僕は嵐の中に突っ込む。迫り来る蛇を殴り潰す。
むしるむしるむしる、殴る殴る殴る殴る。
蛇は倒しても倒しても次々と再生する。おっさんも強い。殴っても殴っても怯まず向かってくる。久しぶりに強い敵だ。経験値も良さそうだ。自然に頬が緩む。
「ザップ、聞いたことあるわ、これって『えすえむ』って奴よね、ルルの持ってた本に載ってたわ!」
まあ、確かにそう見えない事もない。笑顔で巨大なおっさんを殴る僕と、殴られても殴られても起き上がるおっさん。僕は顔を引き締める。いかんいかん。
ルル、あいつ何て本読んでるんだ……今度見せてもらおう。
「オラ!オラ!もっと来いオラァ!」
おっさんしぶといな。まだだ、まだ力とスピードが足りない。頭突き、突き、蹴り。攻撃方法を増やす事で蛇の再生速度を上回る。おっさんの体から生える蛇がどんどん減っていく。
「これで終わりだ!」
蛇がなくなり、地に手をついたおっさんを力いっぱい殴りつける。おっさんの頭にあたり、汚いひげ面がもげて飛んでいく。首のなくなった体は数回痙攣すると動かなくなり、溶けて大地に染みこんでいった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ザップ、特別に泉の水を飲んでいいわ。妖精の加護って奴がつくわ」
ミネアに勧められて、僕は泉の水を掬って飲む。なんか疲れが取れて力が漲る。
「この水、貰って帰ってもいいか」
「いいわよ、こんなのこんこん無限に湧き出してくるから」
僕は水をごっそり収納にいただいた。
「ありがとう、ザップ」
「あんたならやると思ってたわ」
「よく見るとイケメンね」
僕のまわりを妖精達が飛び回っている。きれいに手のひら返しやがったな。けど、悪い気はしない。
「あんたたち、そんなんじゃザップは喜ばないわ、ザップは髭もじゃマッチョなおっさんが好物なのよ」
「おい、ミネア、何言ってやがる」
妖精達が光って、裸の髭もじゃマッチョのおっさんが次々現れる。そして、そいつらは口々に僕をたたえる。
じ、地獄…
「や、止めてくれーーーーっ!」
僕はしばらく、寝るたびにこの光景を夢にみてうなされ続けた。
読んでいただきありがとうございます。