番外編SS 荷物持ち祭りに行く(続き)
ただマイを祭りに誘うだけなのに、何故か緊張してきた。
マイの部屋に行ってもマイはいない。メイドさんに聞くと中庭にいるそうだ。
中庭に行くと、マイはトレーニング中だった。彼女と少女冒険者四人のうちの1人、戦士アンジュと木の武器で模擬戦的なものをしている。これは少し話しかけ辛いな……
僕は窓からきりがいいとこまで待つことにした。
「ザップ兄様何をされてるのですか?」
振り替えると冒険者四人の1人エルフの野伏のデルだ。
「うわっ、な、何でもない」
僕はつい逃げ出してしまった。決してやましい事をしてた訳では無いのに。デルは斥候も兼ねてるので気配があまりしない。心臓に悪い。
今度はあまり人の来ない二階の窓からマイ達を見つめる。僕は何をやってるのだろうか。ただ、祭りに誘うだけなのに。
しばらく眺めて、やっと模擬戦は終わった。アンジュがダウンしたからだ。チャンス!僕は中庭に向かって走る。
マイが見えた所で走るのを止めて、自然に歩いて近づく。う、まだアンジュも一緒だ。2人でどっかに行くみたいだ。
「おはよう、どこに行くんだ?」
「あ、おはようザップ、今から食堂に行くとこ」
「おはようございます。ザップ兄様」
マイとアンジュが食堂に向かうのについていく。
食堂につき、僕達は飲み物を頼む。しばらく、たわいのない話をしてたけど、内容は全く覚えてない。
「じゃ、私はいったん戻るっす」
アンジュが食堂を出る。チャンスだ!
「あ、あのな、ま、マイ、実はな……」
「なあに、ザップ?」
マイが澄んだ目で僕を見てくる。いかん、意識するとするほど、のどがカラカラになる。
「あのな、実は……」
「おはようございます、マイ姉様、ザップ兄様!」
声をはずませて、冒険者四人のうちの1人神官戦士のミカがやってくる。
「「おはよう」」
僕達も挨拶する。
「それで、ザップ、なんなの?」
マイが僕をじっと見つめる。いかん、やばい、心臓があり得ないくらい暴れはじめる。無理だ、ミカの見てる前では僕には無理だ。
「いや、今はいい。また、あとでな……」
僕は逃げ出した。
それからも、何度かマイが一人っきりになるタイミングを狙うが、ことごとく誰か来る。マイって僕と違って面倒見よくてフランクだから、皆に好かれているのだな。多分、誰か来ないどっかに誘わないと、2人っきりで話はできない。邪魔されない所、どこに誘う?僕かマイの部屋しかないか?
「マイ、少しいいか?」
「なによ、ザップ、今日はなんかおかしいわよ」
ここはアンの部屋、マイは炬燵で読書している。部屋にはアンと。妖精のミネアと自称北の魔王のリナがいる。
「ち、ちょっと、話したい事があるからいいか」
僕はまた鼓動が早くなりはじめた。
「いいけど?」
僕は、僕の部屋にマイを連れていった。
しばらく、緊張して声が出ない。僕はしばらく息を整える。
廊下に誰も居ないことを確かめて、扉を閉める。
「あ、あのな、ま、マイ、今晩一緒に祭りにいかないか?」
やった、やっと言えた。
「はい、喜んで!」
マイは笑顔で答えてくれた。僕は胸をなで下ろす。
パチパチパチパチパチ!
部屋の中に拍手の音が鳴り響く。な、なんだ?
僕達を囲んで、すーっと人影が現れ実体化する。
「おめでとう。ザップ、二人で、お祭り楽しんでね」
妖精のミネアだ。あと、冒険者四人とアンとリナ、要は皆いる。
僕は自分でも自分の顔が真っ赤になるのが解った。
「ど、どうして、な、何で?」
「あ、あたしの不可視の力よ、凄いでしょ。ザップがおかしいから、幻体を炬燵において、ずっと見張ってたのよ、ザップって思ったよりチキンね。最後はみんな誘って見守ってたのよ。けど、やっと言えてよかったわ!」
僕はその場に崩れ落ちた。晒し者だ……
結局、祭りには皆で行った……
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