番外編SS 荷物持ちスペシャル唐揚げを食べる。
「じゃ、俺から食べるぞ」
僕達の前には件のスペシャル唐揚げがある。その肉は原始の迷宮でアンジュ達少女冒険者四人が倒したドラゴンの肉だ。血抜きしたときに、マイが首の辺りの肉を少々切り取ってたものだ。言わば、ドラゴンのせせり肉だ。
ここは宿屋の食堂で、いるメンバーは、僕とマイとアンそれと少女冒険者四人だ。
唐揚げは祭りに出してた物の残りで、食堂の従業員たちは厨房で食べている。
「ご主人様、みんな何を緊張してるのですか?」
アンは一つ唐揚げを摘まんで食べる。まだ、メイド服のままだ。寒がりなはずのこいつが今日は薄着だった。どういうカラクリだろう?
「あー、お前それなんの唐揚げか知ってるのか?」
「知ってますよ、ドラゴンでしょ、これめっちゃ美味しいです。知能のないドラゴンは私の中では鶏といっしょです。人間も猿とか食べたりするでしょ」
猿を食べた話とか聞いた事ないが、なんか嫌な話になりそうなので、ここはスルーする事にした。
「お前、今日は寒くないのか?」
「それはこれを飲んでたのですよ」
アンはポーチから小瓶を取り出す。その中には琥珀色の液体が。
「アンちゃん、なにこれ、え、お酒?」
マイが小瓶を嗅いで顔をしかめる。
「うわ、めっちゃ強い酒じゃない」
「はい、一口で体があったまりますよ。けど、もう眠くなったきました」
「俺も少しもらっていいか?」
「だめー!」
「だめです!」
マイとアンに全力で止められる。
気を取り直して唐揚げと対峙する。
マイが言うには、ドラゴンの肉を食べるとその持ってたスキルを手に入れることもできるが、スキル獲得のチャンスは最初の一回だけみたいだと言う。
「なんか緊張してきたな、アンはスキルはどうだったんだ?」
「増えてないわね、その前にアンちゃんいくつかつまみ食いしたでしょ」
「あ、ばれてました?因みになにも起きませんでした」
そりゃそうだろう。ドラゴンの上位種なんだから、下位ドラゴンのスキルは全部もってるだろう。
「因みに、あたしももう食べちゃった。炎熱耐性が少し増えたみたい」
「あー、いいっすね、日焼けしにくくなるんじゃないっすか」
アンジュがマイを羨ましそうに見てる。彼女の健康的な色の肌も悪くないと思うが。
「お前らから食べろよ、俺は最後にいかせてもらう」
戦士のアンジュは炎熱耐性。めっちゃ喜んでる。
魔法使いのルルは暗視。暗闇で本が読めるとか喜んでる。どういうシチュエーションだ?
エルフの野伏デルはまたまた、炎熱耐性。猫舌が克服できたと喜んでいる。
神官戦士のミカは自動再生。もう、もはや人間卒業間近だな。
「行くぜ!」
僕は意を決して唐揚げを口にする。表面はカリッとしてて中はとろっとジューシー。美味しさについ目を細めてしまう。
「はい、ザップーまた剛力。ザップはどこ目指しているの?そんなに剛力のスキルばっかり上げて?」
マイが小首を傾げている。
「知らんわ、好きで手に入れてないわ」
唐揚げを食べるのに使ったフォークが手の中でひしゃげている。これはいよいよ対策を考えないと……