番外編SS 荷物持ち領主に起こされる
「ザップー、おはよう」
目を開けるとそこにはカイゼル髭のおっさんがいた。朝っぱらから地獄だ。この人はこの町の一応領主様だ。
「何しに来た、おっさん?」
「何しにってお前を起こしに来た」
領主って実は暇な仕事なのか?
「それは解ってる、起こして何させるつもりだ?」
「お前に集めてもらった死体を貰いに来た。あれを処分するのは大変なんだぞ、そういうわけで、早朝一発でうちに持ってきてくれ」
「おっさん、言葉を選べ、メイドのねーちゃんが誤解してるだろ」
領主をつれてきたメイドが顔を青くしている。今の僕らの会話を聞いたら、領主と僕がなんか違法な事を隠れてしてるようにしか聞こえない。
「勘違いしないでくれ、私は至ってノーマルだ。たしかにザップ君は魅力的な男性だが、私たちはそういう関係ではない。まだ、手も繋いだ事の無い清い関係だ」
領主はメイドを壁ドンしながら自慢のカイゼル髭をいじっている。こいつ、確信犯だな。僕を誤解させようとしてやがる。
「メイドさん、こいつ、わざとやってるから。まず、俺はホモじゃない。それと、死体って言ってるのは俺の魔法の収納の中に沢山入っている魔物の死骸の事だこれを領主の家に届けてるんだ」
なぜ僕は朝から余りよく知らないメイドさん相手に、浮気の言い訳みたいな事を言ってるのだろうか?メイドさんは首をコクコク振ると、次の仕事に戻っていった。
正直これはきつい。この腐れ領主が毎日毎日来たら、ノイローゼになりそうだ。
「ザップー、お前ホモじゃなかったのか?まわりの女性に聞いてみたが、誰ともやってないそうじゃないか」
「当たり前だろ、みんな仲間だ」
「じゃ、不能なのか?」
「んな訳ねーだろ、毎朝たかぶりまくってるぜ!」
「ザップなにー?なにが朝たかぶってるの?」
丁度廊下を通りがかったのか、マイが入ってくる。
『毎朝』『マイ、朝』いかん紛らわしいな気を付けよう。それに何て言おう。
「素振りをしたくて、たかぶりまくってるぜ!」
「何の素振りをしたいのかな」
領主が壁に手をついて髭をいじってる。
「俺のハンマーをだよ!」
「そうかい!君の大きく逞しいハンマーを手で握り振りまくりたいんだね」
「………」
マイが丸い大きな目で僕を見てる。一瞬僕の下半身をチラ見したような。
「あの、その、頑張ってね」
マイは僕から目をそらし真っ赤になって走って逃げてった。ああ、これは誤解されてるな…
「その、なんか誤解を生むような言い方止めてくれないか?まわりから変態だと思われてしまいそうだ」
「変態、大いに結構じゃないか。人は皆変態的なものをもってるものだよ。それに、君のまわりには綺麗な女性が沢山いる。君が愛想つかされたら誰かまわって来ないかと思ってね。なぜか、私には女性が余り寄ってこないんだよ」
領主はカイゼル髭をいじっている。
『お前がもてないのはそれのせいだよ』
僕は喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。
そのあと、しっかり多めに納品してやった。