番外編SS 荷物持ち回収する
魔物ハザードの翌日、今日はしこたま寝てやろうと思い朝の日課の素振りはお休みした。
二度寝したところで僕の部屋の扉がゴンゴン叩かれ目が覚める。誰だろう。うっさいな。
「ザップ様、領主様がお呼びです」
面倒くさいと思いながらも、なにか重要な事かもしれないと思い、最低限の身だしなみを整えて、メイドさんに連れられて応接室へと行く。
「遅いぞザップー」
領主は椅子から立ち上がる。なんか間が抜けるから僕の名前を伸ばさないでほしい。
部屋にはマイと冒険者四人が待っていた。全員戦闘態勢だ。
「なんだ、またなんか出たのか?」
「いや、魔物が出た訳ではなく、お前たちが倒した強力な魔物の死骸を回収したいのだ。このまま放って置いてアンデッド化されたら困るからな」
領主はカイゼル髭をいじりながら話す。このおっさん髭が無ければイケメンだと思うのに、残念だな。
「俺は疲れた。今日は寝る。お前達だけで行け」
僕は踵を返し扉に手をかける。
「ザップー、報酬は火炎魔法のスキルポーション我が家の家宝だ。依頼内容は全ての巨人、オーガ、トロルの死骸回収だ」
僕は即座に振り返る。
「お前、大丈夫か?たったそれだけでいいのか?釣り合わないだろう!」
魔法を取得するスキルポーションは激レアだ。お金で買えるものではない。僕達はかなりの数のスキルポーションを飲んだけど、一回もあたってない。
「当然だ。今回のお前のやった事に対しては少ない位だ」
ん、なんか会話がかみ合ってない気がするが、スキルポーションを貰えるならいっか。
「おっさん、詳しい内容を聞かせてくれ」
僕は領主の前の椅子に座った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「面倒くさいな…」
僕はどんどん死骸を収納に送り込んで行く。マイと四人娘は僕を置いて温泉に湯治に行っている。アンに乗って。正直巨人の死骸は気持ち悪い。ちなみに昨日おおざっぱに四人娘が金目なものは回収したそうだ。
本当に死骸集めは気持ち悪い。ほとんどが頭が潰れてるか首が落ちている。あとそれか黒こげになっている。
延々と作業を繰り返し、日が沈むまでにやりつづけた。あとは領主の家に運び込むだけだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さすがだな。ザップー。あとは明日から中庭に置けるだけづつ納品してくれ。あと、受け取れ」
マイとアンと冒険者四人で領主の屋敷に今いる。
僕は領主からスキルポーションを受け取り飲み干す。濃厚に甘いし美味い。なんか新しい力が漲る。変な感触だ。
「せっかくだから、魔法を見せてくれないか?」
「いいだろう。ファイヤーボルト」
いかん、のりで屋内で火魔法をつかってしまった。
ぼすっ!
僕の手から僕の人差し指位の大きさの炎の矢が発生して消える。
「ぷぷっ…」
「クスクス」
「ハハッ」
女の子たちが微かに笑う。
宴会芸がうけなかった時みたいだ。いたたまれない。
「ザップ、魔法、使えるだけですごいとおもうよ」
マイのフォローにさらに虚しさが強くなる。
そういう気がしていた。僕は決して魔力が高くないだろうと……