表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

125/2094

番外編SS 荷物持ち立ち上がる【終】


「ウオオオオオオッ」


 叫ぶ事で力を振り絞り前にあるものを全てハンマーでなぎ倒し進む。もう全身返り血でぬるぬるで、気を抜くとハンマーがすり抜けそうだ。足下の死骸に気を付けながら全力で走る。


「ザップーーーッ!」


 マイが叫びながら僕の横に並ぶ。


 僕達は全てをなぎ倒しながら前に進む。


 永遠にも感じる時が経ち、下位巨人族を突破して、僕達は次は上位巨人族の群れに飛び込んだ。


 赤い世界の中、巨木のような巨人たちをなぎ倒して行く。こいつらは全員倒さないと、たった一体だけで、下手したら町が滅ぶ。


「オブッ!」


 一体の巨人を倒した所でその隙をつかれ、巨大な金属の何かで叩かれる。想像以上に飛ばされて地上に叩きつけられる。収納から出したエリクサーで回復するが、疲労までは回復しない。


「グガッ」 


 一体の巨人が僕に殴りかかってくる。よけた瞬間、その巨人の首が吹っ飛ぶ。


「ザップ!大丈夫?」


「ああ」


「キャア!」


 空中のマイを一体の巨人が掴む。そうなんだ。立ってる巨人に一撃で致命傷を与えるためには跳び上がるしかないが、空中では自由がききにくいのだ。もっともマイを掴んだ巨人の頭は僕の収納からだした最後の魔王リナのエネルギー波で消し飛んでるが。けれど収納の中の攻撃手段はこれで終わりだ。


 落ちてくるマイをキャッチしてエリクサーをかける。


「ありがとう、ザップ」


「ああ、それにしてもこいつら強いな……」


 僕はマイを降ろすと、そばの巨人に飛びかかる。


 倒しても倒してもまた現れる。おかしい、この世の中に巨人がそんなに生き残ってるはずがない。誰かが召喚してるのか?


「キャッ」


 マイが巨人に殴り飛ばされた。僕は駆け寄り抱き寄せる。すぐにエリクサーをかける。


「ごめんザップ、あたしもう動けない……」


 マイの顔は青ざめている。僕はマイを片手に抱え、巨人を狩り続ける。


 けど、僕も体が動かなくなり始める。一時撤退するか?


 もう駄目だ。体が言うことを聞かない。


 クソッ!


 撤退する体力ももう無い。


 せめて、マイだけでも……



「ゴオオオオオオーッ!」



 突然、炎が巨人たちを焼き払う。


 巨大な影、アンだ!


 助かった。僕達を追っかけてきたのか。


「やっと追いついた!」


 リナが大剣で一瞬で巨人をなますにする。


「十分回復しました!」


 アンジュが二本の斧で巨人をなぎ払う。ルル、ミカ、デルもそれを援護する。


「あのね、もう魔物はここだけだよ、みんなで刈り尽くしてきたんだ。すごいでしょ!」


 妖精のミネアが蝶のような羽根をはためかせて僕のそばに来てまくしたてると、アンの方に飛んで行った。


 僕もマイを抱えて、アンの背中に跳び乗る。


「リナ、ミネア来てくれ」


 リナもアンの背中に来る。ミネアも飛んでくる。


「どっかにボスがいるはずだ。ミネア、上空から方向を指示してくれ、アン、リナそこに向かって最高の一発をぶち込んでくれ、その中を走ってボスを倒す」


「「「了解!」」」


「あっちよ、黒くてより逞しくて大きい奴がいるわ」


 上空からミネアが叫ぶ。


「ゴオオオオオオーッ!」


「ゴールデンダークロードカノン!」


 アンのブレス、リナのエネルギー波がその方向に放たれる。僕はそこに飛び込み走る。2人の攻撃を後ろから収納にしまって前から放出しながら走っているので、少し服が焼けた位でノーダメージだ。ぶっつけ本番だったけどうまくいって良かった。


 前に立ちはだかる巨人たちが次々と消滅していく。怖えぇ、しくじったら僕もそうなる所だった。


 ゴンッ!


 僕は何かにぶつかって転がる。


 巨大な全身を黒い鎧で覆った巨人だ。アンたちのブレスを盾で防いだ。どういう素材なんだ?

 その後ろには巨大な門があり、開いた扉からゆっくりと巨人が出てくる。あれで無限増殖してたのか。


 キィーーーン


 金属のぶつかる高い音がする。



 マイだ! 



 マイの斧が黒巨人の首に刺さっている。マイの体は所々煙を上げている。


 僕の後ろを追っかけてきたのか!無茶しやがって!


 黒巨人はマイを掴む。




「キャア------ッ!ザップーッ!」




 マイの悲鳴が響く。



 や、やばい。



 僕は巨人へと駆け寄り、一瞬でその盾と鎧を収納に奪う。


 知性をたたえて燃えるように獰猛な目が僕を捉える。



「俺のマイに触れるんじゃねぇ!」



 僕は跳び上がり、残った全ての力をハンマーに込める!


 まだだ、まだ足りない。


 一撃でやらないとマイが握り潰される。


 一か八かだ!


 ハンマーが当たったその瞬間だけ、収納に入ってる全てのものをハンマーの上に出してその重量を増大させる。


「ドウリャアアアアアーッ!」


 あとは気合で押し切る。腕が千切れそうだ。


 ドゴゴゴゴゴゴゴッ!


 僕の渾身の一撃は巨人を頭が踵につくくらいに押し潰した。


「マイ!!!」


 巨人の指を開いてマイを助けだしてエリクサーをかける。全身血まみれだ。危なかったすこしでも遅かったら握り潰される所だった。


「大丈夫かっ!」


「うん、ありがとう……」


 マイは僕を見つめる。


「マイ!何で無茶したんだ!死んだらどうする!」 


「ザップだっていつも無茶してる。あたしだって心配なんだよ。だから置いていかないで……」


「ああ、わかった」


「あたしは、ザップのマイだよ」


 マイがきゅっと僕に抱きついてくる。僕はさっきこっぱずかしい事を叫んだのを思いだして硬直してしまう。聞こえてたのか……

 とっても暖かい。ずっとこうしていたいけど、まだだ。まだ終わってない。


「セイッ!」


 マイを片手に巨人が沸いてくる門を叩き潰し、出て来た巨人も叩き潰す。


 遠くでアンが爪で巨人を切り裂くのがみえる。周りで巨人たちがどんどん倒れていく。みんな頑張ってるんだな。僕も近くにいるやつを鏖殺していく。




「やったぞーーーっ!」



 最後の巨人を倒し、僕はハンマーを天に突き上げる!


「ご主人様やりましたね」


 アンは、僕が収納から出した腰巻きを二枚まいてるだけだ。服を出す魔力はもうないそうだ。


「妾の力見なおしただろう。金のパンツも役立っただろう」


 リナの言うとおりだ。助かったし、金のパンツの加護がなかったら危なかった。


「ザップー、あたしの力みなおしたでしょ!」


 ミネアは僕の顔のまわりを飛び回っている。うざい。


「私たちもお役に立てたっすよね」


 アンジュは斧にもたれかかっている。


「ザップ兄様、名実ともに魔王ですね」


 ルルはデルに肩をかしている。


「みんな無事でよかったです…」


 デルは息も絶え絶えだ。


「私ももっと強くならないと」


 ミカのメイスは鉄球の刺が全て無くなってる。


 みんなが僕とマイに抱きついてくる。みんな返り血でドロドロだ。誰ひとり欠けることなくて良かった。


 長かった戦いがやっと終わった。


「終わったー!」


 僕はミノタウロスの腰巻きを収納からありったけ出してばらまき、その場に横になってくるまって目を閉じた。ここは荒野だけど、とりあえず疲れた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 

 起きた後、帰って領主に報告した。大歓喜、大熱狂だった。けどしばらくは残党狩りで忙しいだろう。


 町に戻っても大熱狂だった。領主の提案でこれからしばらく祭りが開催されることになった。無料で沢山の飲み物と食べ物が饗されるそうだ。僕達はしばらくの間お祭り騒ぎを楽しんだ。

 けどその後は、昼は素材回収などのモンスターの後始末、夜は毎日夜通し祭りというハードスケジュールの日々が僕達を待ってた。


 しばらく、ばたばただったけど、こうして、僕達の平穏な日々は守られた。


 ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。

 みやびからのお願いです。少しでも「面白かった!」「続きが気になる!」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録お願いします。

 執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ