番外編SS 荷物持ち立ち上がる【五】
「次はあたしの番ね出でよ!イリュージョン・アン」
ミネアの手からでた煙が膨らんでドラゴンアンの形になる。それと同時にナイスバディミネアは消え去り、蝶のような羽根に小っちゃい体の妖精ミネアが現れた。ミネアはパタパタと飛んでいき、アンの頭の角にしがみついた。
「ゴオオオオオオーッ」
イリュージョンドラゴン・アンは口からブレスを吐き出す。命中した魔物は苦しんで倒れていく。死んではいないようだが、それを大剣を持ったリナが叩き潰していく。
「みんなやるわね、あたしも負けられない!ザップの横に立つためにも!」
マイは斧を手に前に出た。僕は離れないように気を付ける。
「オオオオオーッ!トリャー!」
マイが両手に力を込め水平に放った一撃は命中したオークのみならずその後ろ10メートル程にいた全てを両断した。何じゃこりゃ!飛ぶ斬撃?いつの間にこんな技を?これはうかうかしてられない。
まずは大技だ!
僕は回転しながら跳び上がりハンマーを両手で持つ。全ての重力と、全ての筋力を乗せて最大級の一撃を落下点にいたものに振り下ろす。
ドッゴーン!
なにか巨大なものが落ちたかのような音をたて、僕のハンマーの一撃は大地を叩く。当たった箇所は抉れ、辺りのものは反動で宙に舞う。ちょっとやりすぎたかな?
僕は穴の底に立っている。すり鉢状で、かなりの大きさがある。穴から跳びだして僕は叫ぶ。
「行くぞ!蹂躙せよ!一匹残さず倒しつくせ!」
それから戦いではなく、一方的な殺戮が始まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
日は傾き、夕日が全てを朱に染めている。
倒しても倒しても倒してもまた敵が現れる。敵はオーガ、トロルなどの下位の巨人族が増えてきた。
大地には見渡す限り魔物の亡骸が踏む場も無いほどに溢れている。僕達は足場の確保のためじりじりと後退していく。その足場の悪さが敵の進軍を遅らせている。
最初は死骸を収納にしまっていたのだが、絶え間なく群れよる敵を前にその時間さえも割けなくなってきた。
死骸をしまうよりも一回でも多くハンマーを振るったほうが効率的だと気付いたからだ。
今戦ってるのは僕とマイだけだ。後のみんなは疲労で休んでいる。このままだとジリ貧だ。いつかは僕達も動けなくなってやられてしまうだろう。
「マイ、まだ動けるか」
「もちろんよ……」
マイは微笑む。耳の立ち方に力がない。やはり、限界が近いのか。
「特攻をかける。どっかにいるボスをやる。アン、みんなを頼んだぞ」
皆はアンの背中の上で休んでいる。
「行くぞ!マイ」
僕は残り少ない力を振り絞り走り出した。